
2017年 90分 イギリス
監督:リン・ラムジー
出演:ホアキン・フェニックス、 エカテリーナ・サムソノフ
重いサスペンスもの。 ★★★
高い評価を受けているというリン・ラムジー監督。
浮遊するような映像感覚や色彩に飛んだ心理描写といった言葉で解説されているようだ。
私は初めての鑑賞。さて、どんなだ?
老いた母親と暮らすジョー(ホアキン・フェニックス)は行方不明の少女を捜す仕事をしていた。
ある日、彼は上院議員の娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)の救出を依頼される。どうやら彼女は売春宿で働かされているようなのだ。
ジョーはハンマーを片手に救出に向かう。
幼い頃の虐待と戦争のPTSDに苦しむジョーには、辛く暗いものがのしかかっている。
そう、まるで「タクシー・ドライバー」のあの主人公を思わせる。
疲れ切ったような雰囲気な彼なのだが、救出を邪魔する奴が現れると一気に気持ちが沸騰する。
手にしたハンマーで容赦なく相手を殴り殺す。まるで見境なし。
このリミットが突然はずれた暴力発露がこの映画の眼目となっている。
ときおり、何の説明もなくジョーの過去の記憶がフラッシュバック映像として挟み込まれる。
それによって、観ている者はジョーが抱えている心の闇を共有することとなる。
凄まじい殺戮の果てに、ジョーは組織に捕らわれていたニーナを救い出す。
二人は追っ手を逃れて・・・、とくれば思い浮かべるのは「レオン」。
ただ本作の少女ニーナは実の父親にも裏切られた過去を持っていて、ジョーと同じように心に暗く惨い傷を抱えていたのだ。
二人がモーテルの一室に隠れていると、TVではニーナの父親の上院議員が自殺したと報じている。
そして踏み込んできた警官たちにニーナは連れ去られ、ジョーは拘束されてしまう。
ニーナにまつわるごたごたの真の黒幕は州知事だった。
警官を撲殺して逃げ出したジョーがニーナを助けようとその邸宅に乗り込むと・・・。
(以下、最後のネタバレ)
騒動が収まり、ジョーはニーナと深夜のカフェで食事をする。
いきなりジョーが自殺をする場面が映し出される。えっ!
しかしそれはすぐに消える。あれは夢? それとも生きているこちらが(死ぬ前に見た)幻影?
ニーナが無表情に言う、「今日はビューティフル・デイだね」。
それに応えたジョーは、ニーナと一緒に立ち去る。カフェに二人のいた形跡だけが残っている。
原題は「お前は本当はここにはいない」とでもいったところ。
なんとも余韻の残るエンディングだった。
カンヌ映画祭で男優賞と脚本賞をダブル受賞しています。