
1987年 151分 アメリカ
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:クリスチャン・ベール、 ジョン・マルコヴィッチ
純文学の映画化。 ★★☆
原作はイギリスの作家J・G・バラードの同名小説で、半自伝的な作品である。
バラードの小説はデビュー作の「バーミリオン・サンズ」シリーズから好きだった。破滅三部作と言われている作品もそのイメージの美しさにうっとりしたものだった。
しかしこの作品の頃になるとあまり好きな作風ではなくなっており、実はこの原作小説も読みかけて中断したままになっていた。
映画になったらどうなんだろうか?
舞台は中国。物語は1941年から始まる。
11歳のジム少年(クリスチャン・ベール)は、父が大使館勤務ということで上海で上流家庭として暮らしていた。
戦闘機好きのジムだったが、日本軍の侵攻により在留外国人の暮らしは大きく変わる。
大混乱となる街中でジムは両親とはぐれてしまう。
無法地帯となった街で一人暮らしていくジム。
だだっ広いが誰もいなくなった屋敷の中を自転車で走りまわるジムの姿は印象的だった。
クリスチャン・ベールはオーディションで約4000人の中から選ばれてこの役を演じている。
このとき13歳で、本作が映画デビュー作である。
その演技力たるや、すごいものである。この一見冗長とも見える映画が緊張感を保っているのは彼のおかげだろう。
食べ物もなくなり、飢えに苦しんでいるところをジムはアメリカ人のベイシー(ジョン・マルコビッチ)に助けられる。
やがて欧米人は日本軍の捕虜収容所へ閉じこめられる。苛酷な生活が始まる。
それにしても、このジム少年がとにかくしゃべる。
幼い身で生き延びるための必死の行動だったとは思うのだが、大人のご機嫌取りのようなことを次から次へとしゃべる。
日本軍の兵士に向かっては降参しますと土下座をする。
可愛いどころか、痛々しい気持ちにさせられる。
収容所の中でも小賢しく走りまわる。
まあ、落ち着きのない子どもである。そうやって大人たちとなんとか渡りあっていくのである。
健気といえばそうなのだが、やはりどこか観ていて辛くなるものを持っている。
しかし、全面的には共感できない少年像のおかげで、映画は緊張感を保っている。
零戦が好きだったジムだが、ムスタングが飛来してくると、その勇姿にうっとりする。
少年の中で戦争はどんな風に捉えられていたのだろうか。
2発の原爆が落とされて終戦となる。
ジムは親とはぐれた他の子どもたちとともに施設に引き取られ、そこで父母と再会する。
しかしとっさには両親も見わけられない。どことなくジムの目はうつろなのだ。
それが必死に戦争を生き抜いた少年の姿だったのだ。
(余談)
原作の解説に拠れば、J.G.バラードは一度はケンブリッジ大学で医学を学びはじめたが、中退してイギリス空軍に入隊している。やはり飛行機が好きだったのだろう。その後に作家に転身している。
なお、バラードは実際には両親と一緒に収容所で暮らしたとのこと。へえ、そうなんだ・・・。