
1960年 151分 日本
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、 香川京子、 西村晃、 志村喬、
汚職サスペンス。 ★★★
黒澤明が黒澤プロを設立しての第1作。あの「用心棒」の前年、「椿三十郎」の前々年の作品である。
当時、社会問題となっていた政治汚職をテーマにしている。
映画は、土地開発公団副総裁の娘(香川京子)と、その副総裁の秘書である西(三船敏郎)の華やかな結婚式の場面から始まる。
公団の汚職疑惑があることから、会場に詰めかけた新聞記者たちが噂話といった形で人物紹介や情勢説明をしてくれる。
おい、あれは公団の契約課長だぞ。こっちが請負業者の社長だ・・・。うむ、判りやすい(笑)。
大筋は、汚職事件の隠蔽工作により自殺に追い込まれた男の息子(それが身分を隠した西である)による復讐劇。
黒澤監督は「モンテ・クリスト伯」に着想を得たとのこと。なるほど。
もちろん観客は復讐の成就を応援する気持ちで観ているわけだ。
西が父の仇と狙っているのは、土地開発公団副総裁の岩渕(森雅之)、管理部長の守山(志村喬)、そして契約課長の白井(西村晃)の3人。
復讐に協力してくれる旧友と一緒に彼らを追い詰めていく西。
副総裁や部長に操られて悪事の片棒を担いでいた白井が、まず破滅の道を歩む。
新たな汚職の隠蔽のために自殺をしようとした白井の部下がいた。彼は西に助けられて生きのびたのだが、そんな部下を幽霊と思い込まされて、怖れおののく白井。
さらに貸金庫の隠し金を西に盗られて、岩淵や森山からは着服を疑われる。
この、次第に半狂乱になっていく白井役の西村晃が上手い。映画を盛り上げていた。
着々と復讐をすすめていく西を、サスペンス・タッチで追っていく。
基本的には善人顔の志村喬も本作では悪人。
西たちに廃墟に監禁されて、空腹から悪事を自白させられる展開は、ユーモラスな部分もあって、面白い展開だった。
しかし、悪人たちも賢いのである。
こんなに俺たちに迫ってくる奴は、いったい誰なんだ? 徹底的に背後を調べ直せっ。
と、昔の写真を点検していた悪人たちが気づく、自殺した男の葬儀に来ていた少年は、これは、名前を変えてはいるが、西じゃないかっ!
身元がばれてしまった西と悪人たちとの対決が始まる。
(以下、ネタバレ)
この映画の不満は、とにかく復讐が成就しなかったこと。西が哀れだぞ。
しかし、その展開が黒澤監督の狙いだったのかもしれない。
でもその展開を台詞だけで済ませていたのはちょっと肩すかしだった。
最後、事件隠蔽がうまくいった岩淵が誰かと電話で話している。
昨夜はよく眠れませんでしたが、これで眠れるようになります・・・。
電話の向こうの真の黒幕は(一番悪い奴だから)ずっとよく寝ていたのだろう。
この映画で描かれた政府と一部企業(人)との癒着、汚職。そして、その隠蔽工作の犠牲となる自殺者。
となれば、誰でもが想い浮かべるのは森友文書改ざんによる職員自殺ではないだろうか。
事件関係者の死によって事件がうやむやになっていくことは、実際にもあるのだろう。
うがった見方にはなるのだが、これらの人の死によって胸をなで下ろしてよく眠れるようになった政治家や権力者も実際にいるのではないだろうか。
黒澤監督がこの映画を撮ったときと、今と、少しは変わった? これでいいのか?