
2025年 117分 日本
監督:土井裕泰
出演:堺雅人、 井川遥
大人の恋物語。 ★★★
原作は朝倉かすみの同名小説(未読)。
中学時代の初恋の相手同士が50歳となって再会し、そこから始まる物語とのこと。
”平場”というのは、特別なものではない、普通の、といった意味合いのようだ。
離婚をして地元に戻った青砥(堺雅人)は印刷会社に勤務し、平穏な生活を送っていた。
ある日、彼は中学生時代に思いを寄せていた須藤(井川遥)と再会する。彼女も夫と死別して地元に戻ってきていたのだった。
という設定で始まる大人の恋物語。
ともに独り身で再会した二人はゆっくりと意気投合していく。
この映画の眼目は、主人公の二人がそれぞれの人生を歩んで中年になっていて、華やかさがまったくないところ。
舞台も東京の外れの下町。二人の住まいはそれぞれじっかであったり質素なアパートだったりする。デートをするのも町の焼き鳥屋。
しかしこれらがしみじみとした味わいを醸し出している。
ところどころで二人の中学時代の姿が映される。
意を決して付き合ってくれと告った青砥に、須藤は素っ気なく「嫌」のひと言で答える。しかし実は・・・。
この初々しい二人の中学時代のエピソードが、今の少し疲れたような中年の二人の姿に重なって、物語に奥行きを与えていた。
中学時代、ひょんなことから二人が夜の町を自転車で二人乗りをすることになる。
警官に見つかり、こら、お前たち、ちょっと待ちなさい、と捕まりそうになったときに、後ろに乗っていた須藤は、行けっ、青砥!とけしかけて逃げ延びるのだ。
化粧っけも少ないように見える井川遥が、芯の強い、それでいてDV夫に惚れぬいたり、若い男に貢いだりする女性を演じて、好かった。
堺雅人は最後の最後で魅せた。それまで微かな笑みを終始たたえていた彼が、押さえ切れない感情で号泣する。
何度も流れ、主人公たちも口ずさむのが薬師丸ひろ子の「メインテーマ」。
馴染みの焼き鳥屋のカウンター奥に座っている隠居爺さん(塩見三省)が好い味を出していた。
号泣する青砥をかばうように、ラジオから流れていた「メインテーマ」のボリュームをそっと上げるのだ。
(以下、ネタバレ気味)
二人のそれぞれのカレンダーにつけられていた12月20日の赤丸印が切ない。
須藤もちゃんと赤丸をつけていたんだ。
須藤は 「青砥に会わせる顔がない」と最後につぶやいたと妹から聞かされる青砥。
須藤は最後まであの日の約束を果たそうとしていたのだな。
タイトルどおりに派手さをまったく排した地味な”平場”の恋物語だった。
それだけにじんわりと伝わってくるものがあった。好い映画でした。
おそらく若い人にはこの映画のじんわり感は伝わりにくいのではないだろうか。
原作も読んでみようかな(噂では、冒頭にまず須藤の死が語られて、そこから青砥の回想になっていくようだ)。