あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

大列車作戦 (1964年)

イメージ 1

1964年 アメリカ 131分
監督:ジョン・フランケンハイマー
出演:バート・ランカスター、 ポール・スコフィールド、 ジャンヌ・モロー

第二次世界大戦レジスタンスもの。 ★★★

第二次世界大戦時、ドイツ占領下のフランスではさまざまな抵抗運動がされた。
この映画は、そんな抵抗運動のひとつとして、ナチスが略奪した数多くの名画をドイツへ運び出そうとするのを阻止したフランス国鉄マンの活躍を描いている。

ナチス将校・ワイルドハイム大佐(ポール・スコフィールド)は、ルーブル美術館から運び出したルノアールや、ゴッホ、ミレー、セザンヌピカソなどなどを、特別列車を仕立ててドイツへ略奪しようとしていた。

(余談)
この大佐は絵画のためだったら自軍兵士の命も犠牲にするような偏執狂的な人物。
しかし、見方を変えれば、この人物のおかげであれらの名画が灰燼に帰さなかったともいえる。
芸術に興味のないナチス将校だったら、パリからの撤退準備の際に美術館に火を放っていたかもしれず、現在に残っていなかったかもしれない。

・・・歴史は複雑で、皮肉に満ちているなあ。

それはともかく、連合軍はもうじきパリへ進攻してくる情勢。
レジスタンスは、なんとかそれまでのあいだの時間稼ぎをして、名画が持ち去られるのを阻止しようとする。

鉄道マンのラビッシュバート・ランカスター)は、仲間の命の方が絵画より大切だとして、はじめは多大の犠牲者がでる阻止活動に消極的であった。
しかし、列車を止めようとした年老いた機関仕が銃殺されるのをみて、仲間と協力をして阻止活動をはじめる。

絵画を積んだ列車はドイツへ向かっていると思わせて、線路切り替えや駅名表示付け替えを巧みにおこなって、結局、一晩中列車はパリの周りを走り、もとの駅へ戻ってきてしまう。
あるいは、別の機関車を暴走させて絵画を積んだ列車の前後の線路を塞いでしまう。
このあたりはわくわくする緊張感の連続である。

列車の衝突場面や脱線場面などは、それこそCGなどではなく、本物の列車を使っているので、重量感のある迫力であった(フランス国鉄の全面協力、とか)。
爆撃機からの爆弾のなかを列車が爆走する場面なども、爆撃機からの俯瞰映像で圧巻。

しかし、絵画を守るために協力した多くの仲間が殺されていく。
ワイルドハイム大佐は最後に、ラビッシュに向かって、お前たちはなんのために闘ったのか分かるまい、と言う。
絵画の価値を分かっていたのは、皮肉にも、絵画を略奪するほど欲しかった大佐だけであり、ラビッシュをはじめとして命をかけてその略奪を阻止したレジスタンスたちは、絵画そのものの価値は理解はしていなかっただろうと思えた。
彼らはフランスの誇りのために闘ったのだろうか。

映画の最後は、梱包された名画があたり一面に列車から散乱している情景と、ナチスによって無惨に射殺されたフランス人たちの遺体が転がる情景が、交互に映される。
名画と、人の命と、その価値を比較しろとでもいうような情景で、理不尽な戦争のむなしさが観ている者に迫ってくるような、そんなエンディングであった。

表面上は、反戦の大活劇ですが、その裏には人の命をどう考えるかといった重いものを含んでいる。
変にひねったところはなく、どんでん返しとか、あっと言うサプライズとかで興味をつなぐといった姑息なところもない正攻法の映画であった。

2時間超を退屈させることは全くありません。大したものです。