あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「風が強く吹いている」 (2009年)

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2009年 日本 133分
監督:大森寿男
出演:小出恵介、 林遣都、 ダンテ・カーヴァー

試写会にて。 ★★★ 

はじめにおことわりなのだが、私の趣味のひとつはジョギングである。
まったく早くは走れないのだが、週に数回は10km程度のジョグをするし、年に何回かはマラソン大会に参加して、ハーフマラソンやフルマラソンを走っている(くり返すけれども、早くはありません)。
だから社会人駅伝、大学駅伝にも興味はあり、箱根駅伝のTV中継もよく見ている。

そんな風に走ることを実際に自分でしている人がこの映画を観る場合、やはり思い入れが違うだろうと思う。
たとえば主人公たちが走るフォーム、非情にきれいであり、それなりのコーチについてかなり走り込んだのだろうなあと思ってしまう。
あんなフォームで走れたら良いなあと思ってしまう。それだけで主人公たちに思い入れをしてしまう。

ストーリーは、まともな陸上部もなかったような大学で集まった10人が、練習を重ねて箱根駅伝をめざすという判りやすいもの。
ウォーターボーイズ」「しこ踏んじゃった」とか、「スィングガールズ」などを思い浮かべると近いものがある。

この映画を見に来る人は箱根駅伝についてはよく知っている人が多いと思うのだが、大会のルールを知らないとわかりにくい場面もある。
たとえば、箱根駅伝は往路、復路で2日間に渡って行われるということ、全10区間なので最低限10人の選手が必要であること、初出場するためには予選会で勝ち残らないといけないこと、ある中継所を1位が通過してから10分経つと未だ到着していないチームは繰り上げスタートになること、そうすると以後は見かけの順位と本当の順位が食い違うこと、10位以内になると無条件に翌年の出場権(シード権)を獲得できること、など。
もちろん、これらのことを知っている方が映画は楽しめる。

原作は「まほろ駅前便利軒」で直木賞を獲った三浦しをんの同名小説。
小説も読もうと思って買ってあったのだが、映画の方が先になってしまった。

三浦しをんの小説は比較的淡々としている。大きな事件が起きてスリルとサスペンスが、なんてものとはほど遠い作風である。
だから映画も淡々とすすむ。ライバルは出てくるが、悪役がいるわけでもない。
走ることの本質がそうであるように、敵はあくまでも自分自身である。
なぜ走るのか、自分らしく走ることとはどういうことか、そのためにどうすればよいのか。
それに加えて駅伝という団体競技であることから、仲間と一緒に走るということについても考えさせてくれる。

三浦しをんらしい台詞も出てくる。
山下りでのスピードにのったユキが、スピード・ランナーであるカケルの気持ちを理解する場面で呟く言葉、「そうか、これがカケルが体感している世界か。カケル、お前はずいぶんさびしい場所にいるんだな」
早く走れてしまう者の孤独感を見事に表していた。

箱根駅伝風景は大がかりで、ちゃんとヘリコプターからの映像もあるし、本物と間違えるほど(実際の映像も巧みに交えているらしい)に、見応えがある。(他校の出場選手役は実際の大学陸上部部員とのこと)
ラストの場面は、(走ったことのある者だったら)おもわず泣けてくる。

(ちょっとネタバレ)

シード権を獲ったのはいいのだが、ハイジはいなくなるし、ユキも卒業してしまう。まあ、ニコチャンは留年するからまだいるのだろうけれど、来年のメンバーはどうするのかな?

展開はベタですが、ジョギングが趣味の私には十分に楽しめる映画でした。