監督:デヴィッド・リンチ
出演:カイル・マクラクリン、 フランチェスカ・アニス
砂の惑星をめぐる宇宙戦史。 ★★★☆
原作はフランク・ハーバートの有名なSF小説「デューン/砂の惑星」。
これは6冊ぐらいからなるなにしろ長い小説。宇宙史だからかなり人間関係なども複雑。これをリンチ監督がまともに映画化するわけがない。
面倒くさい世界設定なんかは冒頭にしゃべりでさっさと説明してしまい、はい、次ぎに行きましょう、という感じ。
(しかし、リンチが撮ったおおもとの映画は5時間近くあったとのこと。それをあまりに長いので半分にカットしてしまったんですね)
で、カットしてもこだわっているのが、やはり造形。
奇怪な造形は最もリンチらしさがでるところだが、敵となる男爵の顔の吹き出物もお見事。「イレイザーヘッド」のあの奇妙な赤ん坊を彷彿とさせる。
それに登場場面は少ないが、巨大な水槽の中に入っているギルドの首領。あれもすさまじい造形だった。
衣装もロシアの皇后なんだか、ドイツの将校なんだか判らないようなもので、重厚感がある。いいよ。
心臓に取り付けた奇妙な栓や(これを外すと血があふれ出してくる)、虫をつぶしてジューズにして飲む器とか、小道具にも凝っている。
自分の好きなところにはこだわっているねえ。
この映画の象徴は、砂漠に潜んでいて振動をキャッチするとあらわれる巨大なサンド・ワーム。
あれはどう考えても「風の谷のナウシカ」に大きな影響を与えていると思えるのだが、どうなんだろう。
砂漠の民が貴族たちの圧制に反発して、という世界観も、「ナウシカ」はかなり参考にしているのでは。
その砂漠の民・フレーメンの瞳は美しい青色をしているのだが、これは水の色であろう。
映画の最後に大きなめぐりがやってくるが、砂漠の民自身が水を内包していたと考えるのは、ちょっとうがち過ぎか。
このあとのリンチのTVドラマ「ツイン・ピークス」で一躍有名になったカイル・マクラクリンは、この映画がデビュー作とのこと。
普通のSF映画としてみても、充分に楽しめるものとなっている。
しかしあえて言うならば、デヴィッチ・リンチ監督の映画としては、私の評価はそれほど高くならない。
リンチは原作に縛られない映画のほうが本領が発揮できると思えるぞ。