1998年 アメリカ
監督:ポール・オースター
出演:ハーヴェイ・カイテル、 ミラ・ソルヴィーノ
ウィレム・デフォー、 バネッサ・レッドグルーヴ
不思議な石にまつわる奇譚。 ★★★☆
ポール・オースターが脚本ばかりか監督も務めている作品。
彼が原作の映画「スモーク」も良かったし、なによりも彼の小説はほとんどが面白い(今年は「幻影の書」を読んだ)。だから、期待をして観る。
サックス奏者のイジー(ハーヴェイ・カイテル)は発砲事件にまきこまれ、一命はとりとめたが音楽生活を断念することとなる。イジーはある日、死体のそばにあったスーツケースから不思議な光る石を入手する。
そしてその石に導かれるように女優志願のセリア(ミラ・ソルヴィーノ)と出会うのだが、結びついた二人の周囲で、石をめぐっての争いがくりひろげられる。
ストーリー・テリングの名手オースターらしい展開で、全く飽きさせない。
主役二人の結びつきも、突飛なようなのだが、何しろ不思議な石が導くのだから不自然ではない。
ハーヴェイ・カイテルは「スモーク」でも主役のひとりだったが、作品によく似合っていた。
不思議な力を持つ石と、そして二人の愛の物語が終わり、たくさんの謎が説明もされないままに残される。
謎は謎のまま残されても、それはそれでかまわないのだが、なにか普遍的なものへとつながっていく謎ではないようなのだ。
ただの、謎(笑)。
そこで、取り残された者としてはきょとんとしてしまう。
だからといって、決して映画がつまらなかったというわけではない。
物語についての説明が何もなされないままなので、観ている者がいろいろと想像を働かせることになる。
すべてはイジーの夢だったとみるのか、それともイジーの確固たる意志によって時の流れが巻き戻されたとみるのか、いずれの場合でも、あの石はこの世から一体どこへ消えてしまったのか。
ね、謎だらけ。
セリアを抜擢して映画を撮る女性監督(バネッサ・レッドグルーブ)をどこかで見た人だと思っていたら、「ダロウェイ夫人」だった。
気品がある大物女優である(なんか、いろいろと物議をかもす人物ではあるらしいのだが)。
取り残された曖昧な気分をどう評価するかによって、この映画の好みも分かれるのでしょう。
私は嫌いではありませんでした。