あきりんの映画生活

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ウォーロード/男たちの誓い (2008年)

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2008年 中国 113分
監督:ピーター・チャン
出演:ジェット・リー、 アンディ・ラウ、 金城武

男たちの友情。 ★★★★

レッドクリフ」の陰に隠れたのか、この映画のことは何も知らなかった。配役の豪華さに観たというのが正直なところ。
しかし、実に見応えのある作品であった。
清末期、太平の乱の時代を舞台に、義兄弟のちぎりを結んだ3人の男たちを描く。

自分の部隊が全滅してしまった清朝軍の将軍パン(ジェット・リー)は、盗賊団首領のアルフ(アンディ・ラウ)と、彼を兄のように慕う男ウーヤン(金城武)と出会う。
戦乱の世を生き抜き、理想をかなえるために、パンはアルフたちを説き伏せて盗賊たちを朝廷軍にする。そしてパン、アルフ、ウーヤンは義兄弟の契り“投名状”を交わし、運命を共にすると固く誓い合う。

清朝軍となったパンたちの軍はめざましい働きをする。
合戦場面は、あの「レッドクリフ」に勝るとも劣らない迫力のあるもの。
ほとんど色彩を排した集団戦のスケールも充分なのだが、ジェット・リーだけに、一人一人の戦いの迫力も圧倒的である。

そんな風に、前半は戦乱ものかと思ってみていたのだが、後半に入ると人間ドラマの色合いが強くなってきて、ぐいぐいと引き込まれた。
3人が義兄弟となった際の”投名状の誓い”とは(映画の原題は「投名状」である)、「生まれは違えども共に死なんとす。義兄弟を殺めた者には必ずや死を。たとえ相手が義兄弟であろうとも、必ずや死を。」というもの。
これが3人の生き様に、悲劇的に大きく関わってくる。

民衆の大義のためには、ときに非情な決断もやむを得ないと考えるパン。
親分肌で仲間の情に厚く、人間的な温かさをどこまでも持ち続けるアルフ。
そんな二人の間でゆれうごく直情的で若者らしい初々しさを残しているウーヤン。
義兄弟となった3人の男たちは、それぞれにおのれの信念を貫こうとする。誰もがまっすぐなのだ。
それゆえに、次第にどうしても相容れないところが生じてくる。

たとえば、双方が消耗しつくした攻城戦で、アルフは、投降すれば殺さないと敵と約束をして開城させる。
しかし、パンは、自軍の兵士に分け与える食料すら足りないことを理由にその4000人を殺そうとする。
二人の言い分にはそれぞれのうなずける理由がある。そのはざまで、長兄(パン)が正しいと言って無抵抗の敵に弓を射るように命じるウーヤンも、また悲しい。

歴史の波の中で翻弄されて、結局は悲しい決断をせざるを得なくなっていく3人の姿が哀れだ。
勧善懲悪とかいった単純なものではなく、それぞれが追い求める理想のために悩む姿が描かれている。
現実の制約の中での選択では、絶対的に正しいなんてものはなく、最後は己の信念に従わざるを得ないからだ。

ジェット・リーアンディ・ラウ金城武の主役の3人は皆、好かった。
パンとの思いがずれはじめていることを感じているアルフが、「三国志」の3人の義兄弟を褒め称える京劇を見ながら泣き笑いのような表情を見せる。このときのアンディ・ラウがすばらしい。
最後近く、ぼろぼろの身体になったウーヤンが、それでも何度も何度も拳でパンを叩く。泣きながら叩く。このときの金城武の姿には思わず泣きそうになった。

戦闘場面の派手さこそ「レッドクリフ」には及ばないが、ドラマの深さでは明らかにこちらが勝っている。
香港の映画祭で作品、監督、主演男優賞など8部門を獲得したとのこと。
たしかに、それだけの見応えのある映画であった。