2002年 香港 119分
監督:アンドリュー・ラウ
出演:アンソニー・ウォン、 エリック・ツァン、 エディソン・チャン、 ショーン・ユー
★★★★
「イナファナル・アフェア」三部作の第2部で、第1作の過去にさかのぼる。副題は「無間序曲」。
前作でトニー・レオンとアンディ・ラウが演じた二人、ヤンとラウがそれぞれマフィアと警察に潜入するところからの物語である。だから主役も若い二人が演じている。
大いに魅せられた。
第1作があれだけの傑作になったときに、その後の続編は往々にして凡庸なものになる。
ところが、これは違った。前作とは同じ舞台を用意しながら、全く異なった切り口で見せてくれたのである。
香港マフィアのボス、クワンが暗殺され、裏社会は権力争いが過熱化しようとしていた。
その騒ぎを収めボスの座を継いだのはクワンの息子だったのだが、マフィアへの潜入を命じられた警察官のヤンは、実はその息子とは異母兄弟だったのだ。
そして、クワンの暗殺を命じられて実行したのは、警察に潜入する前のラウだったのだ。
こうして、ラウとヤンの2人の人生は運命の糸に操られて交差していく。
その若い二人のそれぞれの上司であるウォン警部とボスであるサムも、また奇妙な友情で結ばれている。対立する立場でありながら、相手の立場を考えてやったりしているのだ。
しかし、それぞれの”潜入”を使って、相手の内部事情を探っては裏をかこうとする。このあたりの緊張感は絶妙のバランスである。
かっての東映実録ヤクザものの傑作「仁義なき戦い」シリーズの雰囲気もある(大ボスが暗殺されて、残された有力子分が次の座を狙うところとか、それを恫喝してボスの息子が切り抜けるところとか)。
またマフィアものと言えばこれしかないという「ゴッドファーザー」の雰囲気も、巧みに取り入れている(明るい庭園で催されるボスの子どもの誕生日パーティの場面とか)。
しかし、なんといっても香港映画独特の淀んだような空気と、その中であがくようにして自分の生き方を貫いていく主人公たちの切羽詰まった様子が好い。
この第2作には、前作にはなかったリリシズムがある。
それが続編でありながら、全くマンネリに陥らずに高い緊張感を出せたことにつながっていると思う。
物語りの時間軸としてはさかのぼっているので、ああ、こうなったので第1作のあそこにつながっていったのだな、と、観客がすでに知っている事柄へつなげていく巧みさもある。
そうか、彼が年月を経てトニー・レオンになっていったのかと、考えてみれば変なのだが、そんな感慨も抱かせてくれるのだ。
これに続く第3作は、第1作の後日談となる。また違った魅力で魅せてくれる作品となっている。