1979年 アメリカ 108分
監督:ドン・シーゲル
出演:クリント・イーストウッド
実話を元にした脱獄もの。 ★★☆
「ダーティ・ハリー」シリーズで気心の知れたドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドがコンビを組んでいる。
絶対に不可能と言われてきたアルカトラズ刑務所からの脱獄を描く。
アルカトラズ島はロックと呼ばれるように地盤は岩なので、「大脱走」みたいなトンネルを掘ることは不可能。
島とサンフランシスコ本土との距離は2kmあり、刑務所を脱出して海までたどり着いたとしても、早い海流を泳ぎ切ることはとても不可能。
牢獄は全部が独房であり、仲間と共同しての作業をすることは不可能。さらに頻回の見回り監視がある。
さあ、これだけの厳しい条件でどうするか。
女性は一人も登場しない。台詞も必要最小限に抑えられているようだ。
クリント・イーストウッドは終始苦虫をつぶしたような表情で、全く笑顔を見せない。黙々とした緊迫感がただようぞ。
イーストウッドは、こっそりと入手した爪切りやスプーンで、独房の漆喰の壁を削って換気口の穴を広げていく。地道な作業である。
広げた穴が見つからないように、厚紙に絵を描いてふさいでおく。
そんなことで騙せるのかとも思うが、独房の中は薄暗いから、監視が回ってきても判らないのだろうな。
さらに寝ている様に見せかけるための、頭部だけの人形を作る。こっそりと入手した材料だけでよくもあんなものが作れたものだ。
地味と言ってもいいほどに、リアルな脱獄準備が淡々と描かれる。
脱獄ものと言えばスティーブ・マックィーンの「パピヨン」があった。観たのはかなり前なので、すっかり内容は忘れてしまったが、あちらはどんな風だったかな?
あと、アルカトラズを舞台にしたものでは、ショーン・コネリーの「ザ・ロック」があった。あれは全くのアクションものだった。
イーストウッド以外は知らない俳優ばかりだったが、自らのアキレス腱を切った知性的な黒人役の人がなかなかに印象的であった。
それにしても、脱獄しそびれた隣の独房の男は、肝心の時になぜ躊躇したのだろうか?
天井の脱出口に一人では手が届かないことを知ったときの絶望感が痛々しかった。
執拗に脱獄の過程を描いた映画です。静かな緊張感が続く映画です。