1966年 フランス 173分
監督:ルネ・クレマン
出演:ゲルト・フレーベ、 オーソン・ウエルズ、 ピエール・ヴァネック、 カーク・ダグラス、
アラン・ドロン、 ジャン・ポール・ベルモンド、 シャルル・ボワイエ、 グレン・フォード
パリ解放までを描く。 ★★★☆
第二次大戦末期、連合軍のパリへの進攻も時間の問題となっていた。
パリ占領軍司令官コルティッツ(ゲルト・フレーベ)は、ヒットラーから、連合軍がパリ進攻をしたときはパリを破壊しろとの命令を受けていた。
はたして、連合軍側はパリの街を破壊から守れるのかということなのだが、史実としてパリの街が燃えなかったことを観る者は知っているので、その過程を楽しむ映画である。
とにかく出演者の顔ぶれがすごい。
レジスタンスの一員として、アラン・ドロンやジャン・ポール・ベルモンドが出ている。
二人とも若々しい。
ドイツ軍とレジスタンスの間の仲介役をおこなうスウェーデン領事をオーソン・ウエルズが演じている。
当時、スウェーデンは中立国の立場にあったわけだ。
頼りになるんだかならないんだか、よく判らないような巨体のウエルズが、双方の顔が立つようにと両者の間をあたふたと行き来する様は、混迷の時期の雰囲気をよく表していた。
占領下のパリの街には、武装蜂起しようとする急進派のフランス自由軍や、連合軍の到着を待とうとする穏健なドゴール派がいたりする。
意見の対立はあるものの、パリの街を破壊から守って奪還したいという目的は同じである。
レジスタンスの武装蜂起が成功し、当初はパリを迂回しようとしていた連合軍もパリへの進攻をはじめる。
(レジスタンスの一員(ピエール・ヴァネック)が、連合軍に連絡を取るために敵中突破するあたりは緊張感が高い)。
パリへ進攻する連合軍には、アンソニー・パーキンス(「サイコ」)やイブ・モンタン(「Z」)の顔も見える。
連合軍を迎えるフランスの人たちの歓迎ぶりはすさまじい。それほど解放の日を待ちわびていたのかという感じである。
ジョージ・チャキリス(「ウエスト・サイド・ストーリー」)や、ジャン・ルイ・トランティニヤン(「男と女」)の顔も見たが、どの場面だったかな?
表面上の主役はパリの街を守ったレジスタンスなのだが、実は、ドイツ軍コルティッツ元帥の人間的な判断がパリの街が守られた一番の要因ではないかと思える。
彼は、”戦局打開の手段となるのであれば、パリの街の破壊もためらうことなく行うのだが、現状ではパリ破壊は何の意味も持たない”、と言うのである。
ヒットラーのパリ破壊命令との間で悩むのである。
とても007の敵ボスと同一人物とは思えないほどの好感度である(笑)。
武装蜂起したレジスタンスとの戦いが休戦となったときにも、彼は”早く連合軍にパリ進攻をしてもらえ”と、スウェーデン領事を通じてレジスタンスをそそのかす。
パリ攻防の時間がかかりすぎると、ドイツ軍のパリ空爆が始まってしまうのだ。
そして彼は、最後の時まで、パリの街のいたるところに仕掛けられた爆薬への点火指示を出さなかったのである。
えらいっ!
有名スターが大勢出ているのだが、特定の人物に焦点を合わせて描くのではなく、ドキュメンタリー・タッチでさまざまな人々の活躍を描いている。
戦争の悲惨さを訴えるというよりも、祖国のために抵抗する姿を、どちらかと言えば英雄的に描いている。
(監督のクレマン自身も第二次大戦中は実際にレジスタンス活動をしていたとのことである。)
だから、観ている者としては気持ちよく見終えることができる。
映画の終わりに、誰も聞いていない電話口から引きつったようなヒットラーからの叫び声が流れる。「パリは燃えているか? パリは燃えているか?」と。
エンド・スクロールでは、灰燼に帰さなかった現在のパリの街並みがカラーで映しだされる。
飽きることのない、3時間近い大作です。