あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「Dearフランキー」 (2004年)

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2004年 イギリス 102分 
監督:ショーナ・オーバック
出演:エミリー・モーティマー、 ジャック・マケルホーン、 ジェラルド・バトラー

父親を知らない少年の物語。 ★★★☆

フランキー(ジャック・マケルホーン)とその母リジーエミリー・モーティマー)は、暴力をふるう夫から逃げながらの生活をしていた。リジーは、フランキーには、父親は船員で世界中を航海しているからいないのだと説明していた。そしてリジーは父親のフリをして息子への手紙を書き続けていた。

子どもを主人公にした映画のなかには、ちょっと制作者の意図が見えすぎるものもあって、敬遠気味になる。
しかし、この映画は素直に観ることができた。
あまり大上段に振りかぶったところがなくて、可哀想な境遇の少年なのだが(フランキーは父から受けた暴力のせいで耳も聞こえない)、淡々と描かれている。そこが好い。

ある日、父親が乗っていることになっていた船がフランキーの住む港町に寄港するというニュースが入る。
あれ、こんなはずではなかった、これまでの嘘がバレてしまうと慌てるリジー
父に会えると期待するフランキーのために、リジーは1日だけ父親の身代わりをしてくれる男を捜そうとする。

フランキーは、母と祖母と一緒に暮らしているのだが、煙草ばっかり吸っているこの祖母がまた味があった。
煙草を買いに出てくると小さな嘘をついて家族の心配をしたり、父親について隠し事をすることに反対したりと、フランキーの家庭の隠し味とでも言うべき存在である。
彼女がいなければ、作品はもっとぎすぎすした感じになったのではないだろうか。

父の代役としてあらわれたストレンジャージェラルド・バトラー)は、革ジャンパーが似合ってとにかく格好良い。少年が、こんなお父さんだったらいいな、という理想像である。
初対面の二人はぎごちなく接するのだが、やがてフランキーは”父親”と過ごす時間をとても大切にしはじめる。
頼まれ仕事で父親役を演じるだけだったストレンジャーも、無骨な感じなのだが、フランキーの期待を裏切るまいと、ぎごちなく頑張る。

ストレンジャーが、波切りが下手なフランキーにこれでやってみろと河原の石を捜して渡すところなんかは、本当にいい感じ。
そして、”父親”が渡してくれたその石を投げてしまわずに、宝物のようにそっとポケットにしまうフランキーが、またいじらしい。

フランキーの悪友は、船が着いてもお父さんは会いに来ない、お前のお父さんの話なんかでたらめだ、と言ったりする。
少年特有の意地悪なところもあるのだが、賭の約束をちゃんと守ったりして、なかなか好いところもある奴なんだな、これが。
彼をはじめとしてフランキーの周りの人たちは皆やさしい。それが映画全体のほわーっとした空気を作っている。
(ただ、フランキーに会わせろといってきた実の父親には腹が立ったなあ。お前の勝手な都合ばかりで、過去の過ちをうやむやにするなよ、と言いたくなる)。

フランキーが聴覚障害をもっているところも、作品に深みを与えていた。
父親と過ごせる2日間が過ぎて、ストレンジャーとの別れのときに、フランキーは映画の中で初めて発話する。
たどたどしいのだが、自分の思いを伝えようとして必死に思わず発話した、ということが観ているものにも伝わってくる。じーんとくる。

”父”にあてた最後のフランキーの手紙にはやられた。
思わず気持ちが温かくなってくる。なんだ、そうだったんだ、よかったんだ、と。
母とストレンジャーのこれからの可能性も、観る者に余韻として残すわけだし・・・。なんだ、そうだったんだ、よかったんだ。

小品ですが、観て良かったというお勧めの1本です。