2001年 アメリカ 99分
監督:ドミニク・セナ
出演:ジョン・トラボルタ、 ヒュー・ジャックマン、 ハル・ベリー、 ドン・チーゲル
ど派手な銀行襲撃もの。 ★★★★
引退して落ちぶれた生活をしている元ハッカーのスタンリー(ヒュー・ジャックマン)のもとにジンジャーと名乗る美女(ハル・ベリー)があらわれる。
彼女の提示した高額な報酬につられて、スタンリーは謎の男ガブリエル(ジョン・トラボルタ)に会いに行く。
冒頭でトラボルタがハリウッド映画のうんちくを喋っているものだから、あれ? これはなんだ?と、まず思ってしまうが、実は・・・。
上手い導入部である。
トラボルタがかなりの理論家で、物事の分析能力などにも長けていることをそれとなく示していた。
そのトラボルタ扮するガブリエルの計画は、麻薬取締局が極秘作戦“ソードフィッシュ”で貯めた95億ドルを、コンピューター操作でいただいてしまおうというもの。
で、スタンリーを必要としたわけである。
ガブリエルの豪壮な自宅では裸の美女がたむろしてお酒を飲み、(たぶんものすごく高性能な)コンピューターが用意されている。
悪人て、なんて羨ましい生活をしているんだあ(笑)。
前半の山場は、数百台のカメラを一斉にまわして撮影したという爆発場面。
鉄球が散らばる映像のすさまじさには唸った。
ここまでの映像はなかなかに思いつかないぞ。
それからの展開は二転三転、いやあ、これは面白かった。
ガブリエルは、見えるもので思い込むから騙されるのだ、とスタンリーに自慢げに説明するのだが、それはそのまま、監督が観客に対して自慢していることであるわけだ。
で、映画はやりたい放題。
後半の山場は、警察やFBIに取り囲まれてのバス脱出がどうなるのかというところ。
まさか、ああするとは。
ジョン・トラボルタは「サタデイ・ナイト・フィーバー」で出てきたときには、まったくノリだけの軽い兄ちゃんだな、と思っていた。
しかし、「パルプ・フィクション」あたりから悪人面で活躍し始めてからは、おお、重厚感が出てきたなと、お気に入りの俳優になった。
この作品でも、憎々しいまでの悪役ぶり。
沈着で、見せかけだけではなくて芯から非情なところにすごい存在感があった。
ハル・ベリーも、雌豹のようなセクシーさと、謎めいた危険さを身体中から発散していて、とても魅力的であった。
赤いミニスカートで、”IQが高くても、アレも上手いのよ”なんて耳元でささやかれたら、男たるもの、みな骨抜きになるわなあ(笑)。
タイトルの”ソードフィッシュ”って、なんのことだろう?と思って、少し調べてみた。
すると、禁酒法時代にこっそりと酒を飲ませる酒場に出入りするときの合い言葉が”ソードフィッシュ”だったとのこと。
それ以来、アメリカでは代表的な合い言葉の見本なのだそうだ(名前の見本が太郎と花子、ジャック&ベティのように)。
なるほど。
(以下、完全ネタバレ)
ストーリーとしては何度もどんでん返しを狙っているので、ちょっと無理なところも出てくる。
たとえば、ジンジャーをあんな風にしてみせる必要が、どこにあったのか?
騙す相手がスタンリーじゃなくて、まるっきり観客になってしまっているよ(笑)。
それに、ガブリエルが、本当のガブリエルの死体を用意しておいたのはいいとしても、最後に素人のスタンリーがロケット・ミサイルを発射することまで予想しておくのは、どう考えても無理でしょ。
しかし、面白かったので、そのあたりには文句を言わないことにして。
DVDには別のエンディングが2つ収められていたが、やはり本編のエンディングが一番良かった。