1971年 アメリカ 115分
監督:アラン・J・バクラ
出演:ジェーン・フォンダ、 ドナルド・サザーランド、 ロイ・シャイダー
サスペンス。 ★★☆
NYで行方不明になった同僚を捜すために、クルート(ドナルド・サザーランド)は、彼が卑猥な手紙を送っていたコールガールのブリー(ジェーン・フォンダ)を訪ねる。
しかし、ブリーは何も覚えておらず、クルートを拒絶するのだった。
約40年前のサスペンス映画。
主役のジェーンフォンダの髪型や衣装が時代を感じさせるが、映画そのものには古くささがない。これはすごいことだ。
その大きな要因は映像の感覚が今観ても通用するものだからだろう。
しかし、サスペンスそのものの筋立ては期待するほどのものではなかった。
犯人は容易に推測がついてしまうし、犯人が明かす犯行の動機にも意外性はない。
だからこの映画は、都会で孤独だったコールガールの心の軌跡を追うという、一種の恋愛映画として観るのがよいのだろう。
画面は暗く、陰鬱な雰囲気を終始漂わせている。ブリーの心の中を映し出しているようだ。
男に身体を許しながらも何も感じないブリーは、完全に自分を制御できていると思っていたのだが、クルートに対しては自分を見失うのだ。
お互いに寄り添いはじめた二人が夜の市場で買い物をする場面がある。
ブリーはクルートと腕を組むわけでもなく、1歩前を歩くクルートの上着の裾をそっと持つ。
こんな仕草にブリーのおずおずとした心の動きがよくあらわれていた。
そんなブリーが鼻水まで垂らしながら泣きじゃくる場面がある。それも、なぜ泣き始めたのかとっさには理解できないような展開の中で、だ。
この場面が印象的だった。
わけがわからなくても何か訴えてくるものが確かにある場面だった。
ジェーン・フォンダはこの作品で1回目のアカデミー主演女優賞をとっている。
彼女は年を重ねるにつれて父親のヘンリー・フォンダにそっくりになっていく。
思わず笑えるほど似ていくのだが、幼い頃から長い間、不仲だった父親に似ていくのはどんな気持ちだったのだろうか。
ドナルド・サザーランドは、あの「24」の主役キーファー・サザーランドの父親。
それほど似ていないので、はじめに親子関係を知った時は意外だったのだが、よく見ていると、ドナルド・サザーランドの目はジャック・バウアー(「24」の主役)の目だった(笑)。
正直なところ、見終わったあとにも気持ちが晴れ晴れとするような作品ではなかった。
重い澱のようなものが残る映画だった。
ブリーは新しい生活に踏み出そうとするのだが、はたして幸せになることができたのだろうか?