あきりんの映画生活

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「ハート・ロッカー」 (2008年)

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2008年 アメリカ 131分
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミ・レナ、 アンソニー・マッキー

爆発物処理を描く戦争もの。 ★★★

イラク戦争での爆発物処理班の活躍(?)を描いた作品。
この年のアカデミー賞を、元夫ジェームス・キャメロンの「アバター」と争って、みごとに作品賞をはじめとする6冠に輝いている。
原題は”閉ざされた心の持ち主”といった意味合いかと思っていたら、まったくスペルが違っていて、「棺桶」という意味らしい。

戦争ものといっても舞台となるのは戦場ではなく、一般市民も生活している市街地である。
主人公たちの任務は、そこにテロリストがしけけた爆発物を取り除くこと。
どこで、爆発するか分からない。いつ、爆発するか分からない。誰が爆発させようとしているのかも、分からない。
一瞬で命が終わってしまう、そんな危険と日常が同居している。

冒頭で、戦争は麻薬のようなものというテロップが流れた。
危険と背中合わせの毎日を送っていると、次第にその危険が恍惚感をもたらすようになるという意味のようだ。
この映画の主人公も、爆発防護服を脱いで作業をするような人物。一種の狂気にとりつかれている。

もちろん、勇敢な英雄を描いて鼓舞しようという作品ではない。しかし、声高に反戦をうたっているわけでもない。
イラクがおかれた政治的背景や、アメリカがそれに加わる苦悩みたいなものが語られているわけでもない。
どの戦争にも共通する空しさみたいなものが伝わってくる。

爆発シーンは迫力があり、こんな危険と向き合った日常の恐ろしさをよく伝えてくる。
ただ、それらのことが日々の日常として物語が淡々とすすむので、映画全体の印象は非常に平板である。
いくつかのエピソードが描かれるが、どれも並列的であり、物語として積み重なっていくということがない。
ドキュメント映画を観ている、あるいは日記を見ている、そんな感じになってくる。

この描き方は、おそらくは、このような異常事態が日常となっている異常さに直面している人間を描きたかった、という目論みの結果なのだろう。
しかし、個人的には、物語がどこかへ向かって欲しかったのだがなあ。
それがなかったなあ。

たしかに真面目に作られている作品であった。
しかし、・・・ん、これがアカデミー賞か、ふーん・・・、という気にもなる作品であった。