2001年 イギリス 121分
監督:ジリアン・アームストロング
出演:ケイト・ブランシェット
占領下フランスのレジスタンスもの。 ★★★
戦時下での強い生き方をした一人の女性を描いている。
その強さゆえに実っていく恋物語もあり、怠惰な生活をおくっている我が身を反省させられてしまう。
スコットランド人である看護師シャーロット・グレイ(ケイト・ブランシェット)はフランス語が堪能だったことから、占領下フランスでのレジスタンス運動への協力を依頼されて、身を投じていく。
フランスへ行き、そこで行方不明になっている空軍パイロットの恋人の安否を確かめたいとの思いもあった。
この映画、果敢に困難な状況に立ち向かっていく一人の女性を描いていて、同じケイト・ブランシェット主演の映画「ヴェロニカ・ゲリン」と間違えそうになる(笑)。
あちらの映画では麻薬を蔓延させているマフィアとの戦いだったが。
女性名をタイトルにした映画では、「エリン・ブロコヴィッチ」というのもあったなあ。あれは公害を垂れ流している大企業と闘う果敢な女性だった。
シャーロットはスパイとしての基礎訓練を受け、夜中にパラシュート降下でフランスへ潜入する。
そして偽名を用いてフランス在住の一市民を装いながら、連絡要員として行動していく。
こういうスパイものを観ていると、いつ正体がばれてしまうのかとハラハラする。
気が小さくて臆病な私は、絶対にスパイにはなれないなあ。ナチスの憲兵とすれ違っただけでパニクッてしまうぞ。
ナチス占領下のフランスだが、占領軍に協力的なビシー政府が興味深い存在。
祖国フランスを存続させるためにはナチスに協力しなければならないというのが、当時の彼らの考え方だったようだ。
それに、ナチスに対抗する勢力としては共産党もあったわけで、ナチスの敗北時期がせまってくると、今度は戦後の勢力争いを見込んでの資本主義と共産主義のつばぜりあいも生じてくるわけだ。
歴史は複雑だ。
ナチスのユダヤ人狩りのただ中で、シャーロットはユダヤ人の子ども達をなんとかしてかくまおうとする。
しかし、ついに見つかってしまった子どもたちが強制収容所へ向かう貨物車に載せられていく場面は、やはり胸を締めつけられる。
映画の終盤は戦後となる。
暗い時代とは対照的な明るく穏やかな雰囲気の世界となる。観ている者もほっとする。
シャーロットは、レジスタンス活動をおこなっていたフランスの田舎町をふたたび訪れる。
そこで再会した相手に、シャーロットは、「ずっと言いたかったことがあるの」と話す。
「なんだい?」と彼が問いかえす。
「私の名前はシャーロット・グレイよ」・・・はじめて彼女は本名を告げたのだった。好いなあ。