あきりんの映画生活

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「十三人の刺客」 (2010年)

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2010年 日本 141分
監督:三池崇史
出演:役所広司、 松方弘樹、 稲垣吾郎、 市村正親

殺陣が見ものの時代劇。 ★★★☆

勧善懲悪の大チャンバラ劇。
悪殿を暗殺するために義憤に駆られた13人が立ち上がるという、単純明快な筋立て。後半には50分間も続こうかというすさまじい戦闘シーンが延々と描かれる。
なにも難しいことを考える必要はなく、ただただ面白い。

明石藩主の悪殿を演じるのはSMAP稲垣吾郎。この悪殿が将軍の腹違いの弟だということでやりたい放題の悪行をおこなう。
直訴に及んで切腹をした忠臣の家族を女子供まで弓の的にして射殺したり、慰みものの女の手足を切りとり舌まで抜いたり。

これは殺られて当然という人物像。
しかし、この悪殿、生まれながらに権力を与えられすぎた人生に空しさだけを感じていて、最後に死んでいくときに「今まで生きてきた中で今日が一番面白かったぞ」という意味のことを言ったりもする。
なかなかに深い人物像を見せてくれる。
そんな悪殿を稲垣吾郎が無表情に好演。ただ、台詞だけはもう少し上手になって欲しかったが(苦笑)。

悪殿暗殺の密命を受けるのが役所広司
ハリウッドに進出こそしていないが、今の邦画界は安心して見ることのできる俳優の一人だろう。
彼をバックアップするのが松方弘樹。さすがに東映時代劇の大物だけあって(この映画は東宝だが)、台詞、動作などで画面を本格派時代劇という雰囲気に持っていってくれる。

さて刺客13人が集まる。
残念だったのは、その半数ぐらいで見分けが付きにくかったこと。
誰が誰やら、どんな事情で命を捨てる覚悟でこの刺客となったのやら、さっぱりわからなかった。
まあ、そんなまだるっこしいことはどうでもいいや、と三池監督は考えたのだろうなあ。

さて暗殺計画。そしてその準備。
戦いの場となるであろう宿場町全体を待ち伏せ用に作り替えていく。
このあたりは、あの名作「七人の侍」へのオマージュも感じられて、わくわくする。
迷路のような町並みにして、いたる所に可動式の柵を設け敵を分断して退路を断つ計画。さらに家々の屋根をつなぐ梯子をわたしておく、などなど。
それに仲間の何人かには火薬の使い方も習熟させている。わくわくするなあ。

さて悪殿の護衛陣にも腹心の遣り手、市村正親がついている。
暗殺計画があることを察知して、何としてでも悪殿を守り通そうとする。その護衛数約70名。
70名対13名、となるはずだったのだが、近づいてきた悪殿一行は、なんと300名。
どうする? 
と言ったって、やるっきゃないでしょ。斬って斬って斬りまくれっ!

ここからの50分、とにかく迫力、圧巻。チャンバラ好きならたまりません。
ただ、ちょっと不満を。
戦いのはじめは弓矢で先制して、火計を用いたりして、痛快にすすむ。
やがて、小細工はこれまで、と肉弾戦に入るのだが、目的完遂のためには出来るだけ敵の戦力を叩いておくのが原則。だから、矢が無くなるまでは飛び道具で敵をやっつけておく方が賢かったのだがなあ。
ま、いいや。

最後に役所広司市村正親の一騎打ちとなるのだが、この二人、敵味方とはいえ、結局は二人ともそれぞれの武士道を貫こうとした似たもの同士だったわけだ。
それにひきかえ、役所広司の甥の山田孝之は、今風の言葉で言えば”自分探し”のために刺客に加わっている。
この対比がちょっと見せてくれた。
(あの悪殿吾郎ちゃんも悪行をしながら必死に自分探しをしていた、というのは、ちょっとうがちすぎか。)

(追記) 印象的だった台詞・・・
暗殺に出かける山田孝之を見送りながら、恋人だった吹石一恵が、いつ帰ってくるの?と声をかける。
その返事は、「遅ければ盆には帰る、迎え火をたいておいてくれ。」
く~っ、好いねえ。