1966年 フランス 104分
監督:クロード・ルルーシュ
出演:ジャン・ルイ・トランティニヤン、 アヌーク・エーメ
シンプルなラブ・ストーリー。 ★★★★☆
シンプルと言えば、これほどシンプルな物語も珍しい。
それぞれに最愛の伴侶を亡くした男女が出逢い、結ばれていく、ただそれだけ。
二人の間を邪魔する意地悪な憎まれ役も登場しなければ、不治の病とか経済的な困窮とかそういった障害も全くない。
ただただ二人の心の動きを追っただけの映画。
それなのに、何故これほどまでに心にしみこんでくるのか。
それは、映像が美しいから、音楽が美しいから、アヌーク・エーメが美しいから。
それらがゆったりとした時間を観ている者に投げかけてくる。それにうっとりとしてしまう。極上の絹の肌触りである。
事故で夫を亡くした女性がアヌーク・エーメ)。ノイローゼから妻が自殺してしまった男性がジャン・ルイ・トランティニヤン。
二人がそれぞれの子供を預けている寄宿舎に面会にいって出会う。そしてお互いに惹かれていく。
女性は映画制作にたずさわっており、男性はレーサー(だから男は6000kmの道のりもスポーツ・カーでとばして女に会いに来るぞ)。
格好良すぎる設定だよなあ。でも、何気ないのでまったく嫌みではない。
台詞はとても少ない。
代わりに映し出される二人の顔のアップや、望遠でとらえた海岸の風景に、二人の心の動きを語らせる。美しい。
そこにフランシス・レイの、あの有名なダバ・ダバ・ダの主題曲が流れる。美しい。
波打ち際や防波堤を散歩する老人と犬を望遠でとらえた画面が、印象的。
室内や車内はモノクロで映し、屋外はカラーで撮っている。
監督インタビューによると、単に経費の関係からだったというが、なんだか狙いを持って意図したようにみえるほど、その切り替えも自然で物語の雰囲気をたかめている。
アヌーク・エーメが息をのむほどに美しい。
寒いドービルの海岸でボアの襟のついたコ-トに顔を埋める。美しい。
トランティニヤンの運転する車の助手席でかすかに微笑んだ表情のアップは、もう卒倒ものの美しさである。
作品の中ではピエール・バルー(アヌーク・エーメの亡くなった夫役で出演)が回想シーンで「男と女のサンバ」という曲を口ずさむのだが、これも好いなあ。
この曲はバルーの作曲だとか。
(アヌーク・エーメとピエール・バルーは、実生活でも結婚していたようだ。)
詩情あふれる傑作。ラブ・ストーリーの原点といってもよい作品。
ルルーシュ監督がこの二人の20年後を描いた「男と女供廚箸い作品がある。
もちろん主役も同じ二人なのだが、観たいような、観てはいけないような・・・。