あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「コーリャ、愛のプラハ」 (1996年)

イメージ 1

1996年 チェコ 105分
監督:ヤン・スベラーク

幼子との心の交流。 ★★★☆

この映画は以前からタイトルが気になっていて、コーリャが子供の名前だと言うことは知っていた。
実は、子供を使った映画はあまり好きではない。なんとなく意図が見えてしまうような気がするのだが、それはおそらく私の根性がひねくれているせいだろう(苦笑)。
しかし、とにかく観た。

貧しく女好きのチェロ奏者ロウカは、チェロを運ぶ車を買うお金のために、チェコ国籍を欲しがっているロシア女性と偽装結婚する。ところが彼女は五歳になる息子コーリャを残し、恋人が待つ西ドイツへ逃亡してしまう。
誰も引き取り手がいないコーリャを見捨てるわけにもいかず、仕方なくロウカはコーリャと一緒に暮らしはじめる。

とくれば、これは正攻法の作品。狙い所ははっきりしている。
しかし、とにかくコーリャが愛くるしい。
この映画の魅力のすべてはそこにある。すっかり魅せられる。

一人で入浴しているコーリャが、シャワーのノズルを電話機に見立てて死んだおばさんに、泣きながら電話をかける真似をする場面がある。
寂しいから、早く迎えに来て欲しいと。
言葉も通じない異国で母に見捨てられ、知らない他人と一緒に暮らしているのだ。
そりゃ寂しいはずだ。切ない。

ロウカが買ってくれたおもちゃのバイオリンを、コーリャはとても気に入る。
ロウカたちが一生懸命に弦楽奏の練習をしていると、妙な雑音が聞こえてくる。指揮者が窓の外を観ると、コーリャが真似をしてバイオリンのおもちゃを弾いているのだった。可愛い。

子供の世話なんか面倒くさいと思っていたロウカ(風貌が、鋭さをなくしたショーン・コネリーといったところ)だが、彼の気持ちの動きも自然体で伝わってくる。
最初はぎごちなかった二人だが、次第に相手を必要とするようになる。
観ている者の気持ちも和む。

やがてソ連の体勢が変わり、ベルリンの壁が壊される日が来る。
西ドイツへ亡命していたコーリャの母も故国へ帰れる日がやってきて、コーリャを引き取りにあらわれる。
黙ってコーリャを母の元へ返すロウカ。
コーリャが去って、あれからロウカはどんな日々を送ったのだろうか?

先日、ルーマニアの独裁政治が終わる時代を描いた「世界の終わりの過ごし方」を観たが、これはチェコ共産主義政治が終わる時代が背景にあった。
東欧では、東洋の島国では想像もつかないような激動が起こっているのだな。

素直に観ることができて、素直に好い映画だったなと思える作品です。
アカデミー外国語映画賞をとっています。