2002年 フランス 90分
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、 ジョニー・アリディ
二人の男の交流。 ★★★☆
寂れた街の駅で列車から降りた革ジャン姿の中年男ミランは、ドラッグストアで初老の男マネスキエと知り合う。
そして、オフ・シーズンでどこのホテルも休業していたために、ミランは土曜日までの3日間、マネスキエの自宅に泊めてもらうことになる。
ミランは放浪生活を送る無頼の男。
土曜日には危うい仲間達と銀行強盗をおこなう計画を練っていた。
しかし、心のどこかでは落ち着いた生活を夢見ていて、マネスキエに部屋履きのスリッパをプレゼントしてもらう。
これまで部屋履きを使うような、同じ家での生活をしたことがなかったのだろう。
ミランを演じるのはジョニー・トー監督の「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」で執念の復讐劇をしたジョニー・アリディ。
顔中を深い皺がおおっているアリディは、沈鬱な雰囲気を漂わせていて、奥行きを感じさせる演技だった。皮ジャンがよく似合う。
一方、学校教師を定年まで勤めあげたマネスキエは、これまでの人生でこの小さな街から出ることもなく生きてきたのだろう。
穏やかな、平々凡々な日々に、いつか冒険をする日を夢見ている。
そんな日が訪れることが決してないのは充分に知った上で。
マネスキエを演じるのは「髪結いの亭主」であのアラビア風の印象的な踊りをしていたジャン・ロシュフォール。
ロシュフォールの飄々とした風貌は、いかにもお人好しで、おしゃべり好きな善良な老人によく合っていた。
この二人の男は全く対照的な人生を送ってきたのだが、二人がそれぞれに一大事をおこす土曜日までの3日間に次第に気持ちを通じ合わせていく。
一緒にベランダで夜空を眺めたり、マネスキエがミランに拳銃を撃たせてもらったりと、おしゃべりなマネスキエと無口なミランが奇妙な友情を育んでいく。
マネスキエは銀行強盗を手伝いたいと申し出るが、当然のことながらことわられる。
あるいは、銀行にあるぐらいのお金は自分がやるからそんな危ないことは止めろ、と申し出たりもする。
その土曜日、ミランは銀行強盗を決行する。
土曜日の同じころ、マネスキエは持病である心臓病の手術を受けている。
どちらも命にかかわる二人の運命の時間が重なる・・・。
最後の10分間でうなった。さすがにルコントだ。
ネタバレになるのであまり詳しくは書けないが、映画のタイトルは「列車から降りた男」ではなくて「列車に乗った男」なのだ。
そうなのだ。”男は列車に乗る”のだ。さすがにルコント。
ベネチア映画祭で作品賞と男優賞(どちらが取ったのだろう?)を受賞しています。