あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。約2000本の映画について載せていますので、お目当ての作品を検索で探してください。監督名、主演俳優名でも検索できます。

「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」 (2010年)

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2010年 日本 121分
監督:本田隆一
出演:竹野内豊、 水川あさみ、 樹木希林

シュールな地獄旅行。 ★★★★

ハマル人はハマルし、駄目な人は見始めて30分で後悔する映画だろう。
はちゃめちゃな展開、チープな舞台が、どこまでふざけているのだか。
しかし、そのふざけ具合が案外真面目に思えたりもして、妙に引きこまれてしまった映画。
これはなかなかのもんだよ。

長い同棲生活をしていたために、新婚なのに倦怠期の信義(竹野内豊)と咲(水川あさみ)。
引越し騒動でなくなってしまった炊飯ジャーを買おうと出かけた近所のスーパーで、二人は怪しげな占い師(樹木希林)から地獄ツアーを勧められる。

五反田のスーパーまるよしの屋上に地獄への入り口があるなんて、誰が考えついちゃったんだ。素晴らしい!
濁った水を貯めたバスタブに頭から入ると地獄へ落ちていくなんて、誰が考えついちゃったんだ。素晴らしい!
地獄ツアーを仕切っている(それなのによく判っていないらしい)樹木希林と、その弟子の片桐はいりの胡散臭さはどうよ。笑える。

地獄へ着いたらぜったいに振り向かずに道を歩いて下さいね、と言われていた二人。
着いた地獄は森の中の小道。地獄って、こんなところ?
言われたとおりに歩き出した二人だが、なんと、二人の背後からはいきなり楽しそうなダンス音楽が聞こえはじめる。
おまけに、さっきまでは誰もいなかったのに、二人のすぐ後ろでがやがやと大勢の人が騒いでいる歓声が聞こえはじめる。
おまけに象の鳴き声まで聞こえる。
えっ? これはなんだ? 背後では何が起こっている? 振り向いて確かめたい、でも、ぜったいに振り向いては駄目だと言われている。どうする?

このあとも奇想天外な”地獄巡り”がくり広げられる。
映画は、ありきたりの山道や採石場、工事現場でロケをしておいて、これが地獄の風景だと居直りにもとれる断言ですすむ。
そこに人間の言葉を忘れた赤い人(でんでんも出ている)や、理性を保ったまま地獄の住人になった青い人が出てくる。

いかにもな感じの温泉旅館(この地獄ツワーは温泉付きというのが売り文句だった)につくと、それは雲のうえまで続く高層木造建築だったりする(笑)。
どこまでも続く螺旋階段。部屋は22階、温泉は46階。エレベーターなし(笑)。
浴場のドアを開けたら水平線まで続く温泉。しかもお湯はビーフ・シチュー。これは地獄の釜ゆでなのだろうか(笑)。

とにかく文句なしに楽しめる。
そのうえ、この映画、いろいろと語りたくなるような、そんな形而上的な意味合いすら感じ取れる。
たとえば、地獄の泥棒である濡れた男に盗まれた炊飯ジャーは、日常生活を送る二人の絆をあらわしていたのではないだろうか、とか。
次第に言葉を失っていっていつも怒っている赤い人(赤鬼なのだろう)は、なぜ、そうなっていったのだろう、とか。

(以下、ネタバレ気味。でも、あまり関係ないかもしれません)

赤い人から二人を助けてくれて、レトロな縁日を案内してくれたりする青い少女とその弟がいる。
地獄ツワーも終わりに近づき、別れ際に青い少女が言う、いつか私たちを産んで下さいね。
えっ?
地獄の青い人って、そういう存在だったのか・・・。

軽い気持ちで見はじめたのに、どっぷりとはまり込んで観終えた。
お勧めの1本です。
でも、観るときはお馬鹿になって下さい。