1974年 日本 211分
監督:山本薩夫
出演:佐分利信、 仲代達也
渦巻く政財界の欲望。 ★★★
40年近く前の映画だが、それほどの違和感なく観ることができた。
ということは、描かれた財界に君臨しようとする野望と、それに絡む策謀など、人間のどろどろとした部分は今も昔も変わっていないということか。
”華麗なる一族”というのは、阪神銀行頭取の万俵大介(佐分利信)一家のことである。
もちろん、この”華麗”には皮肉がこめられていて、内実はちっとも華麗ではなく、虚飾と欲望だらけの”醜いったらありゃしない一族”なのである。
とにかく、銀行界10位の地位に飽き足らない大介は、なんとか他行を吸収合併してのし上がりたいとの野望を持っている。
愛人を同居させ、子ども達はすべて政略結婚させているという大介。
家の中の人間関係もすさまじい有り様。政財界で罠を張り巡らせる仕事関係もすさまじい有り様。
自分の野望のためには長男だって利用してやるぞ。それに、この長男は父の自分よりも祖父に似ていて、なんだか可愛くないぞ。
当時の大物俳優をずらりと並べての超大作である。
憎々しげな貫禄の佐分利信はさすが。熱血漢の長男の仲代達也は若々しい。
印象的だったのは、大蔵大臣役の小澤栄太郎。もう政界の尊大で卑小で嫌らしい人物像をこれでもかと演じていた。
それにお追従ともみ手でしたたかに上司を蹴落としていく西村晃も、とても”天下の副将軍”には見えないところが素晴らしい。
ちょい役で志村喬や大滝秀二、滝沢修なども出ていた。
女優陣は京マチ子、月岡夢路、山本陽子、酒井和歌子、大空真弓などなど。
上映時間もなんと3時間半におよび、途中で休憩まで入る(「風と共に去りぬ」あたりを意識したのだろうか)。
しかし、あくどい人間の業が展開する物語に退屈することもなく、一気に見終えた。
山本薩夫監督はこの映画のあとに、やはり超大作「金環蝕」「不毛地帯」と撮っている。
どれも面白かった記憶がある。