1969年 フランス 140分
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル
出演:リノ・バンチェラ、 シモーヌ・シニョレ、 ポール・ムーリス、 ポール・クロシェ
フランス・レジスタンスもの。 ★★☆
重厚な、暗く沈んでいくような雰囲気の映画である。
描かれている物語も暗いが、なによりも登場人物たちの心が暗いのだ。
第二次大戦中のドイツ占領下のフランスが舞台。
影の軍隊とは、戦時下でのレジスタンスの人々を指している。
ゲシュタポと、ビシー政権(傀儡政権である)下の警察によって、抵抗運動は厳しく弾圧されていて、見つかれば拷問の果てに死刑となる運命が待っている。
それでもなお、人々は抵抗運動を続ける。
監督のメルヴィルもレジスタンス闘士だったとのこと。
しかし、映画はそんな人々を英雄視して描いているわけではない。
むしろ、レジスタンス組織の内部での葛藤や、裏切りなど、非常に憂鬱になるような人間模様を、感情を殺したような演出で見せていく。
密告をした仲間の粛正。
必ずしも成功はしないゲシュタポに捕らえられた仲間の救出。
やはりメルヴィルだけあって、レジスタンス組織を描いているのだが、なんとなくマフィア組織が描かれているような雰囲気が感じられてくる。
組織を維持するためには、個人を殺さなければならないこともある・・・といったような。
元は電気技師だった主人公のリノ・バンチェラがレジスタンスの闘士として活動していく。渋い。
重々しい女闘士の仲間にシモーヌ・シニョレ。家族愛に負けて悲しい末路をむかえる。
それにフランス映画ではおなじみの顔があちらことらで出てくる。皆、渋い。
息子によく似ているヴァン・サン・カッセルのお父さんも出ている。
2時間あまり、緊迫した場面になっても音楽が流れることもなく、ひたすら暗い色調の画面で黙黙と、死と隣り合わせの日常が描かれる。
レジスタンス活動が決して格好いいものなどではなく、苦渋に満ちたものだということを、リアルに伝えてくる。
映画の最後に登場人物たちのその後がテロップで流れる。
淡々と告げられるその内容をあえてここでは書かないが、その後のエンディングに流れる音楽も、とても哀切に満ちていた。
まったく甘いところはなし。苦さのみ。
楽しくなるような映画ではありませんが、さすがにメルヴィルが撮った作品という重さを感じました。