監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン、 ジュリア・スタイルズ、 ジョアン・アレン、 デビッド・ストラザーン
ボーン・シリーズ3作目。 ★★★★☆
ついに最終章。
記憶を失ったボーンは、自分が誰なのか、何故このような目にあったのか、その手がかりを必死にさぐる。
そして、CIAのさらなる秘密プロジェクトに関する取材をしていた記者にコンタクトする。
しかし、”ブラックブライアー”という言葉を使っただけで、CIAはその情報を世界中からキャッチするなんて、なんてすごい監視体制だ。
まさか現実にはこんなことにまではなっていないのだろうが、近未来ではありうるのかもしれない。
プライバシーなんて国家権力の前ではないに等しくなるわけだ。怖ろしい。
今回も、スパイ・アクションものなのだが、荒唐無稽さを排したリアル感でせまってくる。
秘密兵器などは出てこずに、ボーンの高い応用能力、戦闘能力で危機を回避していく。
たとえば、なんでもない通行人をいかにも意味ありげな人物に仕立て上げて追っ手の目をくらませたり、なんでもない扇風機で敵を攪乱したり。
このあたりの巧みさには、唸ってしまったぞ。
前作「スプレマシー」でも好きだった場面、パメラ(ジョアン・アレン)を望遠鏡でとらえながらの電話。
今回も 「顔が疲れているぞ」 と、ちゃんと見ていることを明かす。
思わずニヤリとしてしまう。好いねえ。
モロッコ、タンジールでの追跡劇は、本当に堪能できる。
目一杯に身体を使ったアクションが休む暇もなく展開されて、アクション映画はこうでなければ、という迫力に満ちている。
ベルリンの連絡員だった彼女(ジュリア・スタイルズ)が、どうしてボーンにこれだけ味方をしてくれるのかと思っていた。
彼女のひと言、「あなたは扱いにくい人だったわ・・・」。
そうか、かっては二人はそういう仲だったのかと推測させられて、にっこりしてしまった。
最後の、ボーンの消息不明を伝えるTVニュースを見ている彼女が、微かに笑う表情は、「そうでしょうとも、あなたは不死身だから大丈夫よね」といった感じで、これもよかったなあ。
こうして、3作ともに高水準を保ってシリーズが終わった。
甲乙はなかなかにつけにくい程にどれもよかったのだが、あえて順位をつけるとすれば、「アルティメイタム」 > 「アイデンティティー」 > 「スプレマシー」 というところか(僅差です)。