あきりんの映画生活

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「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」 (1989年)

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1989年 アメリカ 109分
監督:スティーブ・クローブ
出演:ジェフ・ブリッジス、 ミシェル・ファイファー、 ボー・ブリッジス

苦い大人の人生ドラマ。 ★★★☆

邦題は「恋のゆくえ」とついているが、これは恋愛を描いたようなそんな甘い物語ではない。
芸術を糧に生活している人たちの苦く、しかしとてもお洒落な映画。
全編にジャズとお酒と煙草が漂っている。

売れないツイン・ピアノ・ユニットのフランク(ボー・ブリッジス)とジャック(ジェフ・ブリッジス)兄弟。
ジャズ・クラブを回って演奏をしてその日暮らしをしている。
(もちろん主役の二人は実際の兄弟でもあるわけだ。)

起死回生の手段としてボーカルを入れようとおこなったオーディションにやってきたのがスージーミシェル・ファイファー)。
スージーの歌に惚れ込んだ二人は、ステージのなんたるかも知らなかった彼女と一緒にトリオを組む。
するとあれよあれよと人気が出て、ステージも引っ張りだこになる。
しかし、そのうちに3人の気持ちにすれ違いが生じてきて・・・といった物語。

ステージでスージーが歌う場面は、ファイファーが吹き替えなしで歌っているとのこと。
それほど声量があるわけではないが、実にジャズらしい雰囲気を出している。
(音楽はフージョン・ジャズの大御所デイブ・グルーシン。)
この映画のお洒落な雰囲気を見事に出している。

家族を持ち、我が家も持っている兄のフランクは、ピアノを生活の糧としている。
毎回同じジョークを繰り返して客を笑わせ、受けの好い曲を毎晩弾き続ける。
それに比して、天才肌で一人暮らしのジャックは、そんな生活のためのピアノを弾くことは惰性でしかない。
15年も一緒に演奏してきた二人だが、すれ違いはじめる。

スージーとジャックは男女の関係になったりもするのだが、それはどこかが肌寒いような、完全には満たされない関係。
甘さもあるのだが、それ以上に(どちらが悪いわけではなく)苦さを感じてしまうような関係。

ジャックが歩いたりするシアトルの街並みが美しい。
ファイファーの歌うジャズ・クラブの場面が楽しい。
そんな中で3人の人生ドラマがゆっくりと進んでいく。

3人がこれから別々の人生を歩もうとするところで映画は終わる。
ジャックが一夜の付き合いをしてきた女性達からいつも言われていた言葉は、「また会える?」
最後の場面で、ジャックがスージーに同じ言葉を言う。「また会えるか?」
好いなあ。

実に味わいがある大人のドラマ。
甘いお菓子が好きというお子様にはとうてい判らないだろうと思える苦みの味わいである。
エンド・クレジットに被さるようにファイファーが歌う「マイ・ファニー・バレンタイン」が流れる。
好いなあ。