あきりんの映画生活

映画鑑賞だけのブログです(苦笑)。★★★★が満点評価ですが、ときに思い入れ加算があります。

「蛇イチゴ」 (2003年)

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2003年 日本 108分
監督:西川美和
出演:宮迫博之、 つみきみほ、 平泉成、 大谷直子

家族のシニカルなドラマ。 ★★★☆

「ゆれる」や「ディア・ドクター」で人間心理を鋭く見せてくれたの西川美和監督のデビュー作。
この作品も(一見)平凡な家庭を映しながら、う~むと思わせる。
デビュー作からこれだけのものを撮っていたんだなあ。

小学校教師の倫子(つみきみほ)は同僚の恋人との結婚を控えている。
父(平泉成)は真面目な働き者で、家を守る母(大谷直子)は認知症の義父を献身的に介護している。
どこにでもありそうな家庭であり、うわべは平穏に見える明智家だった。

しかし、実はリストラされていた父は多額の借金を抱えており、母は介護の生活に押しつぶされそうになっていたのだ。
母の不作為により義父が亡くなり、その葬式の日に、明智家に騒動が押しよせてくる。

人は誰でも、家族にも言えないなにがしかの秘密を抱えている。
そして、人は誰でもなにがしかの嘘をつく。

倫子のクラスで嘘つきと決めつけられた男の子がいた。
担任教師である倫子も、その子に嘘は好くない事よと諭す。
しかし、ひとりの女の子が、**君は本当に嘘をついていたんですか?と、倫子に尋ねる。
嘘は本当につかれていたのだろうか?

葬儀の場に借金取りが押しかけてきて、大騒ぎをし始める。
さらに、10年間も行方知れずだった長男・周治(宮迫博之)も偶然に姿を現わす。
実は香典泥棒だった周治だが、持ち前の(詐欺でならした)口八丁で借金取りを追い払ってくれる。
こうして明智家に新しい家族関係が始まる。

周治を演じているのは芸人の宮迫博之
正直なところ、彼の演技のうまさに驚いた。
この映画は彼のふてぶてしくて、裏がありそうで、それでいて何となく憎めない周治像で成功している。
その彼を含めた家族4人が、皆とても好い。

倫子は、周治が実家の残された財産をだまし取るつもりだ、お兄ちゃんは小さいときから嘘ばかりついて、どうしようもなかったと、兄を責める。
しかし、周治が家の財産をどうしようとしていたのかは、結局判らずじまい。
よく考えれば、周治が持って行かなくてもどうせ財産は金貸しに奪われてしまうのは確かなのだから、倫子がお兄ちゃんに出ていってもらおうよ、というのはあまり説得力がなかった様に思えるのだが。

人は誰でもなにがしかの嘘をつく。
でも、嘘をつかれたと思っても、本当は嘘ではなかったこともあったのかもしれない。
では何故、嘘をつかれたと思ってしまうのだろうか。
相手を信頼していないから? では信頼してやれなかった自分はどううすればいい?

タイトルになっている”蛇イチゴ”は映画の最後になって象徴的に現れる。
倫子が、お兄ちゃんは小さいころから嘘つきだった、蛇イチゴがなっている秘密の場所だと教えられた山の中には蛇イチゴはなっていなかった、と言う。
そんなことはない、それじゃこれから確かめに行こう。
周治と倫子は夜の山の中へ蛇イチゴを探しに行くのである。

明かりもない山の中へ二人は、嘘が在ったのかどうか、を確かめに行くのである。
早い川の流れに遮られた山のもっと向こうに蛇イチゴはあるのだよ、と周治は言う。
本当だろうか?

最後の場面、ああ、と思ってしまった。
あの「ゆれる」の最後の場面で、屈折した兄が弟に見せた謎の笑顔と通じるものを感じてしまった。
さすがに、西川監督、やるなあ。