2011年 日本 145分
監督:犬童一心/樋口真嗣
出演:野村萬斎、 佐藤浩市、 榮倉奈々
籠城の戦もの。 ★★★
普段はあまり本など読まない末息子が、これ、面白いよ、と原作本を持ってきた。
読んでみる。確かに面白い。一気読み。
で、映画もその面白さを期待して観る。
結果、合格!
全国統一を目指す豊臣秀吉が小田原攻略に乗り出す。
その命令を受けた石田三成軍は2万人で支城のひとつ忍城を攻める。守る忍城軍はわずかに500人。
史実に基づいているとのことで、本当に石田三成は忍城を攻めたらしい。
忍び城の城代になったのが”のぼう様”。
本来は”でくのぼう”のことだが、親しみを込めて皆がこう呼ぶ。
のぼう様は武力もないし、知力もあるのかないのか分からないような捉えどころのない人物。
しかし、とにかく人に好かれるという他人には真似のできない特質を持っている。
家臣も民百姓も、のぼう様のためなら、と一丸になって忍城を守る。
たかが500人に何ができるとたかをくくって攻めはじめた石田三成軍は、あれ?こんなはずでは、ということになる。
この石田三成という人物の描き方も面白い。なかなかによく出来た人物として描かれている。
2万人に果敢に立ち向かってくる敵を賞賛する心意気も持っている。
敵味方に分かれて戦っているのだが、どちらにも悪人はいない。それぞれの立場の違いで戦っているだけ。
こういう設定は観ていて気持ちが良い。嫌な気にならない。
この映画の成功の鍵は、主役の”のぼう様”に、狂言役者の野村萬斎を起用したところ。
なんとも捉えどころのないのぼう様を上手く演じていた(原作では大男なのだが)。
のぼう様を助ける3人の家老もそれぞれの個性が描き分けられていて、楽しい。
クライマックスは、水攻めにあって万策尽きたのぼう様が、敵の目の前に浮かべた小舟の上で田楽舞をする場面。
ここはさすがに野村萬斎を起用したことはあるという見せ場になっていた。
最後、小田原城が落ち、忍城も開城することになる。
勝者の石田三成自身が乗り込んできて、敗者ののぼう様と対面する。
お互いを認め合っている感じで、この場面も気持ちよく見ることができた。
この映画、500人で2万人と戦う、という宣伝ばかりがされてしまったような気がするが、あの「十三人の刺客」のようにそのための戦いの策略を楽しむというものではない。
のぼう様という皆に好かれた人物の戦いぶりを楽しむもの。
足が泥だらけの百姓達がお城へ上がるのをためらっていた時に、自ら泥足になってみせるような、そんなのぼう様を楽しむ映画。