2012年 イタリア 97分
監督;ベルナルド・ベルトリッチ
鬱屈した青春ドラマ。 ★★☆
ベルトリッチ監督の10年ぶりの作品。何でも今は車いす生活とのこと。
孤独を愛する14歳のロレンツォは、親にスキー合宿に行くと偽って、こっそりとアパートの地下室へこもる。
スキー合宿代で1週間分の食料を買い込み、ノート・パソコンや本も地下質に持ち込み、1週間を気ままに過ごすつもりだった。
彼にとっては至福の1週間が遅れるはずだった。
主人公のにきび面の少年が、決して間違っているわけではないのだけれども、屈折した心情で世間と対峙している様子がよくうかがえる。
そりゃこれだけの ”秘密基地” をこっそりと準備できて、誰にも邪魔されない時間があるとなれば、傍目から見れば暗い青春なのだけれども、本人にとってはむしろ楽しいことだったのだろう。
ところがそこに、早熟で奔放な異母姉のオリヴィアが転がり込んできた。
ロレンツォの父に捨てられた母を持つオリヴィアは、自由奔放なうえに麻薬中毒でもあった。
そしてなんとか麻薬中毒から脱しようとして、半ば脅迫めいた言動で居場所を求めてくる。
こうして異母姉弟の奇妙な同居生活が始まる。
始めはオリヴィアの闖入を嫌っていたロレンツォだったが、しだいに打ち解けはじめる。
獣の敷物をめぐって二人の意見が一致したりして、このあたりは、それぞれに傷つきやすい二人が気持ちを寄り添わせていくようであった。
しかし、現実社会はそんなに甘くはない。
オリヴィアの麻薬の禁断症状は怖ろしく、未成熟な二人は激しく揺れ動く夜を過ごすことにもなる。
嵐のような幾日かが過ぎて、1週間が終わり、ロレンツォはふたたび元の明るい世界へ戻って行く。
オリヴィアと過ごした日々はロレンツォに何ものかをもたらしたのだろう。
しかし、オリヴィアも救済されたのかというと、どうも暗い影が残っているようだ。
少年、少女ものだからといって(”天使” だからといって)、それほど気持ちが晴れやかになるような映画ではありません。
見終わった後も、この ”孤独な天使たち” 二人にはまだまだ辛い生き方が続くのだろうな、とも思ってしまうのです。
ベルトリッチ、まだ枯れていませんでした。