監督:ニック・カサベテス
出演:ライアン・ゴズリング、 レイチェル・マクアダムス、 ジェームズ・ガーナー、 ジーナ・ローランズ
しみじみとした恋物語。 ★★★★
提示される恋物語は紆余曲折あるものの、決して悲恋物語ではない。
そうではなく、人生そのものが切ないのだ、この映画では。
療養施設に入所している記憶障害の老夫人(ジーナ・ロランズ)に、よく面会に来ているらしい老人デューク(ジェームズ・ガーナー)はある本を読み聞かせていた。
それは若い一組の男女の恋物語だった。
老婦人は興味深げに物語を聞いているのだが、すぐに読んでもらったことを忘れているようなのだ。
映画は老人が読み聞かせている恋物語になっていく。
古き良き時代のアメリカ南部が舞台。
避暑にやって来た裕福な家族の一人娘少女アリー(レイチェル・マクアダム)は、地元の貧しい青年ノア(ライアン・ゴズリング)と出会う。
おたがいに惹かれあった二人の一夏の恋物語がはじまる。
あまり予備知識がない状態で見はじめたので、ライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムスが出てきた時は驚いた。
へえ、この二人が出ていたんだ。
若い二人のはじけるような恋が気持ちよく描かれる。
しかし、夏の終わりと共に二人の恋は家柄の違いから引き裂かれる。
悲恋がはじまる。
ノアは故郷でひたすらアリーを待ちつづける。
一方、すっかり上流社会で成長したアリーは、家柄にふさわしい結婚も決まる。
しかし、偶然に新聞で見たノアの家の写真に微妙に気持ちが揺れ動き、こっそりと思い出の地を訪ねる。
映画のちょうど中ごろだろうか、デュークの家族が療養施設にやって来る場面がある。
デュークは、自分の家族を初めて出会ったかのように老婦人に紹介する。
彼女はにこにこと嬉しそうにそれぞれの人と初対面の挨拶をする。
老婦人が昼寝のために部屋に戻っていった後に、デュークの家族たちは、彼女に本を読み聞かせてもすぐに忘れてしまうのだから無駄よ、と言う。
それでもデュークは、いや、それでも読み続ける、と答える。
(以下ネタバレ)
デュークの家族は、お母さんは私たち子供の顔さえ覚えていないじゃないの、と言う。
ああ、やはりそうだったんだ・・・。
老婦人は、もしかすればそうかな、という感じで観てはいたのだが、やはりそうだったんだ。
記憶をなくすということは、なんと辛いことだろうと思わされる。
愛したことも忘れてしまい、愛した人のことも判らなくなってしまうのだ。
一瞬だけ老婦人が記憶を蘇らせるときがある。その瞬間のなんと愛おしいことか。
デュークが読んで聞かせている物語は、てっきりデュークが書いた物語だと思っていた。
彼が妻アリーの記憶を取りもどすために一生懸命に書いた物語だったのだろうと思っていた。
・・・しかし、違った。
これは記憶を失う前にアリーが必死に書き残した物語だったのだ。ここに感動。
若い二人もよかったが、老夫妻を演じたジェームズ・ガーナーとジーナ・ローランズの、落ち着いた風情が印象に残る作品です。
しみじみとします。