1995年 アメリカ 115分
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、 ジーン・ハックマン
核弾頭を積んだ潜水艦もの。 ★★★★
潜水艦ものは好きである。
外部から閉ざされた空間にあって、無線やソナーなどから探知した情報がすべてとなる世界。
子供時代に、隠れ家に閉じこもってこっそりと外をうかがっていたような緊張感が思い出される(笑)。
この映画も外部から遮断された状況を描いている。
しかも限られた情報しかない状況で世界に一大事を起こしうる決断を迫られるのだ。
緊迫する。甲か乙か、さあ、どちらの判断が正しいのだ?
ロシアでクーデターが勃発し、反乱軍が核施設を制圧してしまう。
アメリカはその危機に対応するために、核ミサイル搭載の原潜をロシア近海に派遣する。
ベテランの艦長(ジーン・ハックマン)は根っからの軍人気質。新任の副長(デンゼル・ワシントン)は冷静沈着といったところ。
ロシアの反乱軍がアメリカに向けて核ミサイル発射の準備をしているという情報が送られてくる。
相手の発射準備が整うまえに、こちらから先に核ミサイルを発射しろとの大統領命令が届く。
えっ! 本当に核戦争に突入するのか?!
これは演習ではない、これは演習ではない、という艦長の艦内放送が響く・・・。
ここからの展開が面白い。
本国から追加の指令の無線が入る。「先ほどの命令は・・・」
ちょうどその時に敵潜水艦の攻撃を受け、こちらの潜水艦の無線装置は全く使用不可能になってしまうのだ。
敵を駆逐したものの、あの途中までしか受信できなかった指令は何を伝えようとしていたのか・・・?
核ミサイルを発射せよと言う命令だったのか、それとも中止せよという命令だったのか。
もしロシアが核ミサイルを発射しようとしているのにそれを阻止しなかったら、アメリカは壊滅的な打撃を受けてしまう。
ここにいる皆の家族も死んでしまうのだぞ。そんなことを黙って見過ごすわけにはいかん。
しかし、もし情勢が変わってロシアが核ミサイル発射を止めていたら、こちらが核ミサイルを発射したことによって無意味な第三次世界大戦が勃発することになる。
無線を直して命令をきちんと確認してからにすべきでしょう。
発射中止の命令を受けとっていない以上は命令を履行すべきだというルールと、人類の未来を変えるような事柄を不確かな情報で決断すべきではないというモラル。
ミサイルを発射しようとする艦長と、発射は待つべきだという副長の意見が、どうしようもなく対立する。
優等生のようなデンゼル・ワシントンはもちろん格好好いのだが、なんといってもジーン・ハックマンが実に好かった。
頑固で、昔気質の軍人をこれでもかと演じていた。
(以下、ネタバレ)
結果的には、ああ、よかった、ということになるのだが、冷静に考えれば艦長の意見にも一理はあった。
この結果になったのは単に運がよかっただけじゃないか、というのはあまのじゃくな見方?
最後にハックマンがワシントンに、君の意見が正しかったな、と言う。
核ミサイル発射の判断についてかと思ったら、雑談に出てきていた馬の血統の話だった。
もちろん両方にかぶせているわけで、にくい台詞だった。
世評はそれほど芳しくないようですが、私は充分にハラハラして楽しみました。