あきりんの映画生活

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「悪人」 (2010年)

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2010年 日本 139分
監督:李相日
出演:妻夫木聡、 深津絵里、 満島ひかり

悪人を愛した女は・・・。 ★★★

この映画、殺人を犯してしまった孤独な若者に、出会い系サイトで知り合ったような関係の女性が惹かれて、一緒に逃亡生活をおくる、というもの。
原作は芥川作家の吉田修一
さすがの物語、さすがの人物造形、である。

長崎のさびれた村で土木作業員として働く祐一(妻夫木聡)。
ある日、出会い系サイトで知り合った佳乃(満島ひかり)に馬鹿にされたことからかっとなり、彼女を殺してしまう。
その佳乃は、裕福そうな大学生・圭吾(岡田将生)に馬鹿にされて夜のドライブの途中で車から放り出されていたのだった。

人を殺すのはどんな理由であれ、悪事である。そんなことをするのは悪人である。
しかし、この被害者の佳乃も非道い女なのである。
その非道い様には、殺されても仕方がないじゃないかと思わせるほどのリアリティがあった。さすが、満島ひかりの演技は伊達じゃない。
それに、その殺人のお膳立てをしてしまった圭吾の嫌らしいことったら。
佳乃と圭吾、この二人、人間味がないという点では、殺人者よりも悪人なのではないか。

さて、殺人を犯して鬱屈した生活を送っていた祐一は、出会い系サイトで知り合った光代(深津絵里)と会う。
それぞれが孤独な二人。それぞれを思うことができた。
祐一が殺人犯だと知った光代は、警察へ出頭しようとする圭吾を引き留めて、二人で(絶望的な)逃亡生活をはじめる。

この映画の要は、殺人を犯した祐一よりも、彼と共に逃げた光代の心の有り様であるだろう。
なぜ、彼女は殺人犯と一緒に逃げた?
それまで男友達もいなくて、平凡な生活をしていた奥手の女性だったのに。

突拍子もないような光代の選択なのだが、深津絵里の演技がよくて、その選択が絵空事には見えないところがよい。
祐一が、なんでおれはこんな人間なんだろう、と光代にすがるように呟く場面もよかった。
最後まで祐一と一緒に行こうとした光代だったが、そんな光代の首を祐一は絞めようとする。
なぜ? そして祐一は警察に捕まる・・・。

事件が終わり、光代の生活は元の平凡なものに戻る。
最後、光代が祐一のことを、そうですよね、あの人は人殺しですもんね、悪人ですよね、と呟く台詞も印象的だった。

暗い人間ドラマだが、気持ちに突き刺さってくるものがあった。