あきりんの映画生活

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「めぐり逢わせのお弁当」 (2014年)

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2014年 インド 105分
監督:リテーシュ・バトラ

都会の片隅のドラマ。 ★★★

インド映画だが、歌も踊りも一切ない。
大都会ムンバイの片隅に暮らす普通の人が織りなす人間ドラマ。
インド映画にも、歌って踊ってばかりではない、こういう作品もあるんだ。

この映画で初めて知ったこと、
その1:インドの通勤電車にはドアがない(あるいはドアが閉まらない)。だからみんな満員電車の乗降口から身体をはみ出させて乗っている。
その2:ムンバイでは、サラリーマンはお弁当を持って家を出ずに、あとからお弁当配達人が届けてくれる。

このムンバイのお弁当配達というのは、およそ日本では考えられないようなシステム。
契約をした配達人が各家庭からお弁当を受けとり、自転車や電車に乗って会社まで届ける。
夥しい数の配達人が、それぞれ鈴なりにぶら下げたお弁当を運ぶ。その数は約60万個だという。
そしてこのシステムによる配達間違いは、ある大学の統計学的な検討では600万分の1だという。へえ~?

この映画は、その600万分の1のお弁当の配達間違いから起きた物語を描いている。

小学生の娘を持つイラの夫は、典型的な仕事人間。家庭を省みてくれない。
そんな夫に喜んでもらおうと、イラは腕をふるってお弁当を作る。
そのお弁当箱はきれいに空になって戻ってくる。
イラは、さぞかし夫は喜んでくれただろうと思ったのだが、どうもそのお弁当は間違って別の場所に届けられていたようなのだ。

インドの普通の家庭の様子が垣間見ることができて面白い。
イラのアパートの上の階には叔母さんが住んでいて、大声で話すと大声で答えてくれる。
漂ってくる匂いから料理の味付けの指南もしてくれる。
この叔母さんが声だけで一度も画面には登場してこないところも面白い。

会社へ届けるお弁当はすごい。
金属製の丸い密閉容器4つ重ね。もちろんカレーのような汁物も定番、ナンも定番のようだ。
毎日あれだけのお弁当を作るのは、そりゃ奥さんは大変だなあ。
朝の夫の出勤時間までに作り上げるのはとても無理。間に合いそうにはない。それであとから届けるのだろうか?

それはさておき。
イラのお弁当を受けとったのは、妻に先立たれてお弁当は仕出し屋に頼んでいた初老のサージャンだった。
急に美味しくなったお弁当にすっかり満足する。
すると、翌日のお弁当箱には、不審に思ったイラが書いた手紙が入っていた。
「このお弁当を食べているあなたはどなたですか?」
その手紙に返事を書くサージャン・・・。

こうして、お互いに素性も知らず、会ったこともない二人の手紙のやりとりが始まる。
二人とも次第に毎日の手紙を楽しみにするようになる。
携帯電話やネットでのSkypeが普及しているこの時代に、紙切れに書かれた手紙のやりとりのまだるっこさが、なんともほのぼのとしている。

夫の愛情が感じられなくなっているイラ、妻に先立たれて毎日が惰性になっているサージャン。
二人で一緒にブータンへ旅立つ夢想を書き合ったりもする。
ついにイラは、私たちは一度会うべきよ、と、カフェで落ち合う日時を指定してくる。

はたして二人は実際に出会うのだろうか。

真面目な(?)インド映画といえば、「モンスーン・ウェディング」というのがあった。
結婚式前後の人間ドラマだったが、催し物にまつわる歌や踊りが若干入っていた。
この映画は歌、いっさいなし。踊り、いっさい、なし。
どちらかと言えば、地味。しかし、ほのぼの系。
良い映画でしたよ。