あきりんの映画生活

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「灼熱の魂」 (2010年)

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2010年 カナダ 131分
監督:ドゥニ・ビルヌーヴ
出演:ルブナ・アザバル

運命に翻弄された一人の女性のドラマ。 ★★★★☆

重い。とてつもなく重い映画。
見終わって言葉を失って気持ちが澱んでいくような映画。まさに”灼熱の魂”である。
しかし、この重さはこの映画を観ない限りは経験することはできない。
他の凡百の映画には代えられないものを持っていた。

14年間、公証人の秘書をして姉弟の双子の子供を育て上げた母、ナワルが亡くなった。
二人の子供、ジャンヌとシモンは母からの遺言を受けとるのだが、それは、父と兄を捜し出してそれぞれに手紙を渡して欲しい、というものだった。
父は死んだと聞かされていたし、兄がいることなど初めて知った。
これはどういうこと?

姉、ジャンヌは母の遺言に従い、母の祖国レバノンへと旅立つ。
ここから映画は、兄を捜すジャンヌの様子と、母、ナワルが歩んできた物語が平行して描かれていく。
カナダで平凡な人生を送ってきたと思われていた母、ナワルの人生は、二人の子供たちの想像を超えた過酷なものだったのだ。

レバノンの政治情勢がどのようなものであったのか、全く疎いのだが、キリスト教とそれに対抗するイスラム教勢力の、すさまじい抗争があったようだ。
キリスト教にもいくつもの宗派があり、対するイスラム教にもいくつもの宗派がある。
それらが入り乱れてレバノン内戦は起こっていたようだ。
宗教の対立は、(宗教には寛容な?曖昧な?いい加減な?)日本人から見ると、なぜそこまで?というような激しい憎悪をもたらすようだ。

家族からも村人たちからも非難される異教徒との恋をしたナワルは、妊娠していた。
しかし、異教徒の恋人はナワルの家族によって殺され、生まれた子供はすぐに乳児院に預けられてしまった。
その乳児院は激しい戦火で焼失してしまっていた。

母としてのナワルは、故郷を出て我が子の消息を求めて彷徨う。
バスに乗り合わせていても、宗教の違いにより、キリスト教徒だったナワル以外の皆が殺されてしまったりもする。

一方、母の故郷を訪ねたジャンヌは、村人から、あなたがナワルの娘なら私たちはあなたを歓迎することはできない、と拒絶される。
彼の地を訪れることによって、ジャンヌは母のすさまじい過去をすこしずつ知っていく。

やがて、我が子を砲撃して殺したイスラム教徒を憎んだナワルはテロリストとなる。
敵側の要人を射殺したナワルは捕らえられ、何年間も牢獄に閉じ込められる。
そして拷問を受け続ける・・・。

2時間を超える作品だが、子どもたちが全く知らなかった母ナワルの強烈な人生があり、その秘密を少しずつジャンヌとシモンの姉弟がたどっていくという展開は、まったく倦むことを知らない。
二人はやがて母の残した真実にたどり着くのだが・・・。

見終わったあとに、ぐったりと疲れ果ててしまった。
こんなにも重い映画だったのか。
しかし、すごい映画である。観ておくべき映画である。

(註)

この映画の鑑賞記事のいくつかで結末まで書いてしまっているものがありました。
この映画はミステリー仕立てです。結末を知ってしまってはいけません。
この映画は”どんな映画か”を知るだけで観ましょう、
”どうなる映画か”は知っていてはいけません。