2000年 ベトナム 112分
監督:トラン・アン・ユイ
母親の命日に仲の良い3姉妹が集まり、供養の準備をしている。
映画は、2週間後の父の命日に3姉妹が供養の準備にふたたび集まるまでの日々を描いている。
ベトナムのハノイが舞台で、監督は村上春樹原作の「ノルウェイの森」を撮ったトラン・アン・ユン。
平穏にみえる3姉妹なのだが、実はそれぞれに悩みを抱えている。
たとえば、長女の夫は出張と偽って出かけては別の家庭を築いており、彼女自身も行きずりの恋をしている。
次女の夫は売れない作家なのだが、彼女は妊娠をする。
独身の三女は弟と暮らしているのだが、恋人と上手くいっていない。
といった風にそれぞれのドラマがあるのだが、描かれ方は淡々としている。
時間はゆっくりと流れていて、夏至のころはベトナムは雨期。
雨の匂いがして、どこか湿ったような気持ちまでも気怠いのだ。
それに画面の色彩が鮮やか。
家の周りを取り囲む緑の木々、姉妹らの着ている青い民族衣装、彼女らのきれいな艶やかな黒髪。
それらが雨に濡れていて、ゆっくりと時間が流れるのだ。これがこの映画のすべてと言ってもいいぐらい。
良かったのは三女。弟と二人でのアパート暮らしをしているのだが、夜になると弟のベッドにもぐり込む
俳優志望で肉体の鍛錬に余念のない弟はそのベッドから逃げ出している。
いくらか妙な雰囲気の姉弟なのだが、それをさらっと描いている。
先年訪れた実際のハノイの雰囲気に比べると、映画はずいぶんと美しい。
監督はベトナム系といってもフランス育ちということなので、そのあたりの感覚があるのだろう。
美しい撮影はリー・ビンビンという人。
クリストファー・ドイルと一緒にウォン・カーウァイ監督の「花様年華」を撮り、あの「珈琲時光」を撮った人とのこと。
なるほど、画面の感覚は同じだ。気に入った人はハマる映像である。
雨期のベトナム。もちろん開けはなたれた部屋にはエアコンなんてありません。
気怠く天井でまわる扇風機の風をうけながら鑑賞しましょう。