あきりんの映画生活

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「薄氷の殺人」 (2014年)

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2014年 中国 106分
監督:ディアオ・イーナン
出演;リャオ・ファン、 グイ・ルンメイ

寒い季節のサスペンス。 ★★★☆

中国の寒い地方のあちこちで、男の死体の断片が発見され、事件は迷宮入りとなる。
5年後にそれと似た手口の事件が再び起こる。
元刑事のジャン(リャオ・ファン)が独自に捜査をすすめていくと、一人の女に行き当たる。
ウー(グイ・ルンメイ)というクリーニング店に勤めている美しい未亡人は、殺された男たちみなと親しい関係にあったのだ。

いつも季節は寒い。
どのくらいの規模の地方都市なのかは判らないが、街並も寒々としている。
身を切るような風景の冷たさが、登場人物たちの気持ちまで凍らせているようだ。
ジャンも、ウーも、気持ちには温かさがまったくないようなのだ。
やむにやまれない感情で動いているのだろうが、気持ちがささくれ立っている。

ジャンはなぜウーに惹かれたのだろう。単に男の欲望?
そしてウーの素っ気ないようで思わせぶりな態度はどういうことだったのだろう。単に女の計算高さ?

ジャンはお世辞にも格好好いとは言えない。小太りで、口べた。それにぶっきらぼうで身勝手。
一方のウーは細身の美人。はかない感じが全身からにじみ出ている。
要するに美女と野獣。そして美女の弱点を野獣が握っている。
危うい二人の関係なのだ。

二人で夜のスケートに行く場面がある。
また、二人で夜の観覧車に乗る場面がある。
どちらも暗く寒い。事件が大きく動く息を詰めるような場面だ。

(以下、ネタバレ)

結局ウーの気持ちはよく判らなかった。
自分のために一生を差しだしてくれた夫をどう思っていた?
自分を愛するあまりに罪を重ねる夫をどう思っていた?
そんな夫から逃げるためにジャンを利用しようとしていた?

それにジャンもよく判らない。
事件が解決し、その宴席で功績を褒められて喜び、ダンス教室で歓びを表すように踊りまくる。
ウーに対しての気持ちはどうだったんだ?
そんなに踊り狂うようなことだったのか? それともそれは気持ちの裏返しなのか?

原題は「白日焔火」、日本語では「白昼の花火」である。
物語の中で同じ名前のナイトクラブが登場し、エンディングでは、白昼に花火が上がる。
白々とした白昼の花火。大きな音だけが虚しいようだ。

あの白昼の花火はジャンが打ち上げていた?
そのことに気づいて連行されていくウーは微かに笑った?
二人のどちらの心も白々しく薄ら寒い。

人の心の寒さがひしひしと伝わってきます。
ベルリン国際映画祭で、グランプリの金熊賞と、主演男優賞にあたる銀熊賞を受賞しています。