1997年 香港 145分
監督:メイベル・チャン
出演:マギー・チャン、 ミシェル・ヨー、 ヴィヴィアン・ウー
激動の時代の姉妹のドラマ。 ★★★☆
中国の近代史はどろどろに揺れ動く。
その激動に巻き込まれた人々のドラマは、チェン・カイコー監督の「さらば、わが愛/覇王別姫」でもそうであったように、非常に劇的である。
この映画はそんな時代の波に揺れ動かされて生きた三姉妹を描いている。
三姉妹といってもただの姉妹ではない。
映画の冒頭で「一人は冨と、一人は権力と、一人は祖国と結婚した」と言われた姉妹である。
長女の宋靄齢(ミシェル・ヨー)は大財閥の孔祥熙と、次女の宋慶齢(マギー・チャン)は中国革命の父孫文と、三女の宋美齢(ヴィヴィアン・ウー)は後の中華民国総統蒋介石と結婚したのである。
すごい一族があったものだ。
もともと宋家は裕福でそれなりの地位もあった一族のようだ。
辛亥革命前の中国で娘たちは英語教育を受け、アメリカへ留学したりもしているほど。
幼いころに仲良く遊んでいたころの三姉妹の姿も映る。
後に反目し合ったりする運命を知ることもなく・・・。
物語の中心となるのは次女の慶齢。
共に革命への道を歩んでいた孫文が亡くなった後も、慶齢は中国共産党の精神的柱として強い指導力を発揮していく。
その孫文に見いだされて取り立てられながら後には共産党と対立したのが蒋介石。
だから蒋介石と結婚した美齢と、孫文の妻であるう慶齢は、どうしようもなく対立した立場になってしまう。
彼女たちの生きた時代は、辛亥革命、満州事変、西安事件、日中戦争、国共内戦と続いていく。
まさに激動の中国近現代史。
受験科目として世界史を勉強したはずだったが、忘れていることも多かった。
そうか、西安事件では蒋介石は捕虜になったのだったか、それで国共合作・反日統一になったのだったか・・・。
大富豪と結婚した長女の靄齢は、夫とともに政治の世界からは抜けて香港へ行ってしまう。
彼女がある意味では一番平穏な人生を送ったのではないだろうか。
政治が絡むと(特に中国のように権力の中心がときに大きく変化する国では)、その人の人生は荒波に翻弄されるようなものになる。
長女役のミシェル・ヨーはかなり控えめな役回りだった。もう少し活躍させても好かったのでは・・・。
次女役のマギー・チャンは好きな女優だが、強い女性を演じていてよかった。
映画自体も、女性監督だからか、やや描き方に甘いところがあるようにも思えたが、悪くなかった。
歴史の変動そのものを描くのではなく、その歴史にそれぞれに翻弄された姉妹の葛藤を描いていた。
まさに大河ドラマ。
145分という長尺ものだが、まったく飽きることはなく一気見であった。