あきりんの映画生活

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「追憶の切符」 (2008年)

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2008年 中国
監督:ジェイコブ・チャン
出演:ニッキー・ウー、 ズオ・シャオチン

母を訪ねるドラマ。 ★★☆

主人公ユートン(ニッキーイウー)は、生まれてすぐにカトリック教会の前に置き去りにされていた女の子。
教会のシスターの養女として育てられ、成長した今はテレビ局のリポーターになっている。
その育ての母のシスターが死ぬ直前に、実の親を探す手がかりとなる2枚の切符をユートンに手渡す。

この映画の原題は「車票』、英語題は「ticket」。
邦題だけ”追憶の”という形容詞がついている。この方が日本人好みと、配給会社は考えた?(苦笑)

映画冒頭で、ユートンは胎児が先天性の難病だと知りつつも産む決心をした夫婦にインタビューをしている。
生まれて難病で苦しむぐらいだったら、はじめから生まない方がその子のためでは・・・、とユートンは考えている。
彼女は、生まれてすぐに実親から不要の子として捨てられた自分自身を受け入れきれていなかったのかもしれない。

ユートンは幼なじみの男の子と一緒に、切符の出発点である中国の山村に親を探しに行く。
広大な中国のこと、山村といったら、日本では想像に難い未開の地の雰囲気である。
急流を渡るのに、向こう岸まで渡した長い一本のロープに取り付けた滑車を使わなくてはならない。
自分の腕力でロープを掴んで滑車を動かすのだ。うへえ・・・。

村の役場で、生まれてすぐに亡くなったと届けられていた子供のことを調べてもらう。
該当家族は3組。険しい山道を越えて家族を1軒ずつ訊ね歩いて行く。
まるで桃源郷のような中国の山村の風景が、都会と隔絶した世界を作っている。

やっとのことで探しあてた両親はすでに他界していた。
しかし、死んだ母のわずかな遺品の中に、ユートンはたくさんの切符を見つける。
それは、毎年毎年のこの村から教会までの長い道のりの切符だった。

(以下、ネタバレ)

そうなのだ、母はユートンを不要の子としてただ捨てたのではなかったのだ。
毎年1回の教会の奉仕日にはユートンの成長を見守りに、遠い道のりを越えてこっそりと会いに来ていたのだった。
あの滑車を使うような急流を越えて、山肌にうねうねと続く細い道を延々とたどって。

毎年の教会の奉仕日に、皆で写した写真も残っていた。
ユートンのすぐ後でいつも顔を隠すように写っている女性の頭巾は、ユートンが教会に置き去りにされていた時にまとっていた布と同じ模様だった。

そして1枚だけ北京までの切符も・・・。
それはユートンの北京の大学の卒業式の日付だったのだ。
名乗ることもなく、母はユートンの成長を見守り、祝福してくれていたのだった。

ユートンの物語と平行して、自閉症の子を育てる父親が断片的に写る。
障害児に無償の愛をそそぐ父親の笑顔も、また暖かい。
エピソード的で出番は少ないのだが、とても存在感のある親子像だった。

静かな、事件らしいこともなにも起こらない映画です。
しかし、じんわりと温かい気持ちが湧いてくるような映画です。