あきりんの映画生活

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「ブルーベルベット」 (1986年)

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1986年 アメリカ 121分
監督:デビット・リンチ
出演:カイル・マクラゥリン、 イザベラ・ロッセリーニ、 デニス・ホッパー

初期のリンチ・ワールド。 ★★★

デヴィッド・リンチ監督の処女作「イレイザー・ヘッド」には、その異形な美(?)で圧倒された。
あんな映画を作れば、ある種のレッテルを貼られて、それなりの期待をされるのも当然。
で、「エレファント・マン」、「砂の惑星」と作って(どれにも異形の者が登場する!)、第4作目が本作。

ジェフリー(カイル・マクラクラン)は異常発作で入院した父を見舞った帰りに、切り落とされた人間の片耳を見つける。
この耳の持ち主は誰? 持ち主は今どうなっている?
ジェフリーは好奇心から異様な世界に踏み込んでいく。

青い空に白いフェンスの、うわべはのどかに見える田舎町を、製材所のトラックが通りすぎる。
流れてくる曲も「ツイン・ピークス」のあのオープニング曲に雰囲気は好く似ている。
この映画、「ツイン・ピークス」の前振りのよう。

この映画では、はじめの方で草むらで激しい生存競争を演じている虫たちをアップで映す。
また終わりの方では、幸せを運んでくるといわれているコマドリがその嘴に食料となる虫をくわえているところを映す。
うわべは何でもないような光景のなかでくり広げられている生命のせめぎ合いを差し出してくる。

片耳事件の鍵となるクラブ・シンガー役のイザベラ・ロッセリーニは、あのイングリッド・バーグマンの娘。
なるほど、そう言われれば雰囲気が似ている。
マーティン・スコセッシ監督と結婚していたこともあるらしい。
ステージで「ブルー・ベルベット」を歌っているのだが、あまり上手くないところがかえって雰囲気を出している。

彼女の部屋に忍び込んだジェフリーがクローゼットの隙間からのぞいてしまうのは、倒錯した性の世界。
酸素マスクを手にしては幼児返りをしたかと思うと、急にサデスティックになる狂気の男を、デニス・ホッパーが怪演。

普通の映画からすれば、なんとも奇妙な描写が随所に見られる。
それも全体的には原色でくっきりと描かれるので、明るさの裏にはりついている不気味さを感じさせる。
ボビー・ビントンが歌った有名なポップス「ブルー・ベルベット」も、なんとも退廃的で、気怠い。

しかし、リンチの映画にしてはとても観やすい。
不条理感が少なく、物語もちゃんと説明が付く範囲内に収められている。
それが好いことなのか、もうひとつであるのか、リンチだけに評価に迷うところ。

だが、個人的には、やはりもっとぐしゃぐしゃにして欲しかったなあ(汗)。