2005年 中国 102分
監督:ニン・ハオ
大草原の詩。 ★★★☆
モンゴルのどこまでも続く緑の大草原が舞台。
パオを家として暮らす遊牧民の家族たちがそこにはいる。
この映画は、そんな大草原に暮らす3人の少年の、なんとも素朴で、なんとも愛すべき生活を描いている。
彼らは大冒険もするのだ。
ある日、少年ビリグは水汲みに行った川で見たこともない白い玉を拾う。
これは、いったい何だ?
遊び友だちのエルグォートゥやダワーと一緒にいろいろと考えるが、判らない。
それはただのピンポン玉なのだが、卓球を見たこともない彼らには不思議な白い玉なのだ。
物知りの(?)おばあさんに尋ねると、それは神様の真珠の球じゃ、とのこと。
それじゃ、これは宝物だ!
でも、夜になっても光らないぞ?
映画には大草原のおおらかな生活が映し出される。
子どもたちは馬や羊たちと一緒に生活し、無邪気で一生懸命だ。
もちろんテレビなどないのだが、映画の途中では、古いテレビをなんとか映るようにしようと、長い竿の先にアンテナを付けて悪戦苦闘しているおじさんもいた
電源は自家発電だったのだろうな。
そんなテレビの切れ切れの声から、少年たちはあの白い玉が卓球の球だと知る。
しかも、卓球は国技であり、白い玉こそがわが国家の球なのです、と話しているぞ!
じゃあ、あの白い玉がなくなって国家はきっと困っているに違いない、国家へ返してあげなくては・・・。
ということで、彼ら3人はこっそりとそれぞれの家を抜けでて、北京へ玉を返しに行こうとする。おいおい。
面白いのは、2人は馬に乗っているのだが、1人はスクーターに乗っていること。どうして?
普段から彼は馬の代わりにスクーターに乗っていた。どうして?
それはさておき、途中にはゴビ砂漠が横たわっているぞ。おいおい。
彼らの大冒険はどうなる?
とにかく3人の少年のひたむきさが、好い。
こせこせとした都会の生活、というか、文明生活とはまったく無縁のところにあるひたむきさである。
自然の中で生活するためのひたむきさは、言い古された感想になってしまうが、忘れていたものをも思い出させるようだ。
(しかし、大草原の生活では映画を観ることができないよなあ・・・ 汗)
(最後の場面のネタバレ)
やがてビリグが大草原を離れて街の学校へ入学するときが来る。
入学式の途中でトイレに行きたくなった彼は、広い学校の中をうろうろする。そしてトイレと間違えて体育館の扉を開けてしまう。
体育館の中を見つめるビリグの顔がアップで捉えられる。
ビリグの呆然とした表情、それにかさなるように体育館の中からの音が聞こえている。
それはたくさんの玉が卓球台で打ち返されている音だった・・・。
大草原のゆるやかなうねりのようにゆったりとした映画です。
ほのぼのとした映画を観た嬉しさが、じんわりと広がってくる映画です。
このポスターのピリグの笑顔がなんとも好いでしょ(嬉)。