監督:アラン・レネ
出演:エマニュエル・リバ、 岡田英次
広島を彷徨う孤独な二人。 ★★★★
戦後14年目の広島で男女が出会い、二十四時間の恋に落ちる。
男は日本人の建築家で、女はフランス人の映画俳優で撮影に来ていた。
撮影が終わって明日は帰国するという1日が描かれる。
モノクロの画面が二人のベッドでの会話を捕らえ、二人が彷徨う広島の街を映し出す。
原作・脚本はマルグリット・デュラス。
映画の雰囲気は、誰に語りかけているのかも定かではないようなモノローグの多いデュラスの文体をよくあらわしていた。
女は、私はヒロシマを見たわ、と言う。
男は、いや、君はヒロシマを見ていない、と言う。君は何も見ていない、と。
原爆ドームが映され、そこに展示されている資料もていねいに映し出される。
男の家族は原爆で亡くなっていたのだ。
街では原水爆反対のデモがおこなわれたりもしている。
彼女は大戦中に敵国のドイツ兵を愛してしまい、そのために村の人々から弾劾された過去を持っていた。
村の名前はヌベール。
広島とヌベールの二つの地名が重なり合い、錯綜する。
ホテルを出た二人は夜の街を彷徨う。
真には混じり合うことのない会話がいつまでも続けられる。
二人はどこまでわかり合えることができるのだろうか。
夏の夜の生暖かい風までも感じられるような映像が美しい。
最期に、彼女は彼をヒ・ロ・シ・マと呼び、彼は彼女をヌベールと呼ぶ。
かなりのメッセージ性も込められているのだろうが、それを包み込んだ映像詩とでも呼べる作品となっていた。
(邦題は妙な誤解を招くようで、良くないと思う。原題は”ヒロシマ、わたしの恋人”とでもいったところか)