2007年 アメリカ 122分
監督:コーエン兄弟
出演:ジョシュ・ブローリン、 ハビエル・バルデム、 トミー・リー・ジョーンズ
大金をめぐる犯罪もの。 ★★★★
コーエン兄弟の、問答無用の犯罪映画。
麻薬取引の大金を盗んだ男を、怖ろしい追っ手がひたすら追い詰めるという物語。
単純明快。それなのにすごい緊張感。
やはりコーエン兄弟は伊達じゃなかったなあ。
テキサスの荒野で麻薬取引の大金を見つけてしまったモス(ジョシュ・ブローリン)。
持ち帰ってしまったところ、身元がばれてしまい組織から追われることに。
追ってくるのは、変なおかっぱ頭でぎょろ目を向いたシガー(ハビエル・バルデム)。
このシガーが怖ろしい。
雇われた殺し屋なのだが、もう常軌を逸した殺人鬼としか思えない。
手には圧縮空気のボンベとそこから伸びたホースの先端がエアガンとなった武器を持っている。
この見慣れない武器がまた怖ろしい。
これはなんだ?と思う暇もなく、人の額を圧縮空気で打ち抜いてしまう。
それも見境なし。邪魔と思えばどんどん殺してしまう。躊躇なんてこれっぽっちもしない。
この映画の魅力は、この異形の殺し屋シガーの存在にある。
もちろん、追っ手がすごければ、逃げる方もそれに対抗するだけの存在感が無ければならない。
モスを演じるブローリンもただの小物ではなかった。
ヤバい大金を盗んで追われることになってしまい、しまった!とは思ったものの、そこですっかり腹を据える。
俺も男だ。妻は守るぞ。来るなら来い。
こうして追跡劇が丁々発止と繰り広げられるわけだ。
そしてこの映画に味わいを添えるのが、凶悪犯罪にとまどいを隠せない老保安官トム(トミー・リー・ジョーンズ)。
なんとか事件を解決しようとするのだけれども、どうしようもない。
(飄々とした感じは、なんとなく某缶コーヒーのCMを想い出させる 笑)
さて、モスは逃げ切れたのか。大金はどうなったのか。
最後のあたり、腕の骨が折れたシガーに通りかかった少年が声をかける、「おじさん、骨が見えているよ!」
シガーは少年が来ていたTシャツを売ってもらって、それで腕を吊って去っていく。
コーエン兄弟、やるなあ。
緊張感を最後まで保ちながら、しかし爽快感もなく、映画は終わっていく。
老保安官には、昔からこの国では不条理な死が続いている、俺がひとり頑張ったところでどうしようもない、という嘆きがある。
原題は「年寄りのための国は無い」とてもいったところか。
この映画はアカデミー賞の作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞と、4冠に輝いています。
そのほかにも賞の総なめで、全世界で89部門(作品賞22・監督賞19)の受賞を果たしたそうです。
すごい。