2014年 アメリカ 92分
監督:リチャード・ロンクレイン
出演:モーガン・フリーマン、 ダイアン・キートン
老夫婦のアパート物語。 ★★★
画家のアレックス(モーガン・フリーマン)と元教師のルース(ダイアン・キートン)は、ブルックリンのアパートで40年間暮らしてきた。
そこは5階の眺めのいい部屋なのだが、エレベーターがなかった。
若いころには考えもしなかったが、歳を取ってくると、この階段の上り下りは堪えるぞ。
そこで二人はこの部屋を売り払って、エレベーターのあるアパートに住み替えようと考える。
さあ、少しでも高く売るために、家をきれいに片付けて見学会をしなくては。
さあ、エレベーターのついた部屋をいろいろと見て、終の棲家を探さなくては。
ルースの姪の不動産屋おばさんが段取りをしてくれる。このおばさん、世話好きでいいのだけれども、やかましいなあ(笑)。
主役のモーガン・フリーマンとダイアン・キートン。
初共演ということだが、さすがの二人で、実に好い味を出している。
家を売る、売らない、病気になった老犬の治療をする、しない、などで諍いもするのだが、真の所ではお互いに支え合っている。
それが二人の細かい言動からよく伝わってくる。
たとえば、アレックスが描いてきたたくさんの絵。最近は売れなくなってきた。
でも、ルースは、夫は芸術家なのよ、売れる売れないじゃなくて描きたいものを描くのが芸術家なのよ、といった意の啖呵を切ったりもしてくれる。
素晴らしい奥さんだ。
この夫婦の絆を支えていたのは、一緒に乗り切ってきた辛い過去。
今でこそかなり自由になっているのだろうが、40年前には、白人女性が黒人男性と結婚することは、それこそ大問題だったわけだ。
ルースは家族をはじめとする周囲の偏見と闘って結婚したのだ。
そして、ルースは不妊症だった。
私は欠陥人間だと嘆く彼女を、アレックスはそのことも含めた一人の人間として支えてきたのだった。
二人の絆が強いはずだ。
こういった二人の過去が断片的に挟み込まれて、映画の深み、味わいが増している。
そしてアパートのこの部屋は、そんな二人のすべてを包み込んでいたわけだ。
さて、部屋の見学会にはいろいろな人がやってきて、値段の交渉をしていく。
不動産屋おばさんは大張り切りで、なんとか値段を高くしようとしてくれる。
しかし、近くの橋でテロリストの爆弾騒ぎが起きてしまい、あたりの部屋の価値が下がってしまう。
う~ん、当初のもくろみから外れるなあ。
それと平行して自分たちも買う部屋を見に行かなくてはならない。
この部屋はちょっと狭いわね。うん、そうだね。
この部屋はきれいで広さもいいけれど、窓からの眺めは今の部屋の方がいいわね。うん、そうだね。
ほのぼのとした市井の人間ドラマです。
軽く、洒落た感じの好いドラマでした。
フリーマンは歳を取っても粋だし、キートンは歳は取っても可愛いです。
(以下、ネタバレ)
唯一不満だったのは、はじめから予想がついていた結末(どんな?)へ、やはり落ち着いていったこと。
まあ、この物語はそれしかないのだけれど。
というか、そのことにあらためて気づいて、新しい明日を迎える物語でした。