監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:ロバート・デ・ニーロ、 アン・ハサウェイ、 レネ・ルッソ
企業もの人情ドラマ。 ★★★☆
いいねえ、こういった温かい雰囲気の人情ドラマは。
観ているこちらまでほんわかとしあわせな気分になれる。
ナンシー・マイヤーズ監督は、さすがにこういったものはツボを押さえていて上手い。
若いながらもファッション通販業で成功しているジュールズ(アン・ハサウェイ)。
そんな彼女の会社に、シニア・インターン制度によって採用された70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)がやってきた。
妻に先立たれたベンは、新たな生きがいを求めて再び働くことを望んだのだった。
この映画はロバート・デ・ニーロの起用で成功していると思える。
かってはふてぶてしくアル・カポネなどを演じた人物とは思えないほどに、温厚な初老の紳士を、嫌味なく演じている。
一方のアン・ハサウェイもよかった。
彼女のこういった役をみれば、そう、これは「プラダを着た悪魔」の彼女の後日談ではないか、と思ってしまうぐらいに合っている。
始めは若者ばかりの会社で居所もなく、する仕事もなく、まるで浮いていたベンだったのだが、そのうちにさりげなく周りの若者たちに助言をするようになる。
人生経験に長けたベンは、長く会社経営に関わってきたという経験も持っている。
それに、彼にはなによりも人への思いやりがあり、包容力があるのだ。
会社の人気者になっていくベンを、次第に認めはじめるジュールズ。
そのジュールズは、華やかで若々しいのだけれども、どこか人生にまだ頼りないところがある。
会社のあまりの急成長ぶりに彼女自身が戸惑い、そのあげくは夫との関係もぎくしゃくし始めてしまう。
そんなときに、そっとさりげなく(このさりげなさが好いんだよねえ)ジュールズを支えてくれたのがベンだった。
途中では、ジュールズが誤送信してしまったメールを削除しに、ベンとその仲間が大活躍(!)をするという、気分転換のようなエピソードもある。
ベンに老いらくの恋人(レネ・ルッソ)もあらわれたりもする。
ちょうど親子ほどの年齢差のある二人の、上司と見習い採用者という関係。
これが二人の立場が逆だったら、まったく普通で物語にならないところだが、このちょっとあり得ないような設定の人間模様を、自然にほのぼのと魅せてくれた。
誰にでも勧められる映画だった。
それにしても、デ・ニーロはすごい。
ジュールズの車の運転手をしていても、かっては精神を病んだタクシー・ドライバーだったとは、とても思えないぞ(笑)。