監督:ピレ・アウグスト
出演:ジェレミー・アイアンズ、 メラニー・ロラン、 シャーロット・ランプリング
過去をさぐるミステリー。 ★★★☆
スイスの高校教師ライムント(ジェレミー・アイアンズ)は、離婚して孤独で単調な毎日を送っていた。
ある日彼は、橋から飛び降りようとする女性を助け、彼女が残した本を手にする。
その本に導かれるようにして、彼は衝動的にリスボン行きの夜行列車に乗り込んでしまう。
映画は、ライムントがリスボンの街で本の作者であるアマデウを訊ね歩く物語と、そのアマデウの生き様の物語を、交互に映し出す。
いわば、主人公が、偶然に手に入れた1冊の本の作者の人生を旅する物語である。
主人公の少しうらぶれたような静かな有り様と、彼がたどる波乱に跳んだ活動的な男の物語が、対照的だった。
まるで人生の表と裏を成しているようで、情感に溢れていた。
アマデウは1970年代の民主化・反体制運動に参加していた。
医者でもあった彼は、人道的な見地から体制側の人物の命を助けたりもする。
そして激しい恋にも情熱を捧げる。
そんなアマデウの生きた跡をたどるライムント。
ライムントが訪ねるアマデウの妹役にシャーロット・ランプリング。
兄の死を未だに認めようとしない彼女の存在感がすごい。
ランプリングは、どの映画でも登場してくるとその独特の雰囲気で強い印象を残す。
すごい。
政治運動も恋も、活動的に時代を走り抜けたアマデウ。
その人生を知るほどにわが身の凡庸さを味わうライムント。
しかし、リスボンで知り合った女医さんが優しい言葉をライムントにかけてくれるラストは、ほのぼのとしていた。
映画ではスイスからリスボンまであったいう間に着いていたけれど、本当はすごく離れています。
国境も幾つも超えるよねえ。
そこだけは、あれ?でした(笑)