監督:フェルナンド・メイレレス
スラム街の少年ギャングたち。 ★★★☆
ブラジル映画といえば、主題曲の「カーニバルの朝」で有名な「黒いオルフェ」がある。
あちらも貧しい街での人々を描いていたが、この映画のスラム街たるや、そんなものの比ではない。
幼い子どもたちも銃を手にして欲しいものは人を殺してでも手に入れようとする、そんなスラム街が舞台。
実話に基づいたということで、映画はドキュメンタリー風に描かれる。
画面の捉え方、光と影のコントラストの出し方など、映画自体はかなりお洒落な作りとなっている。
写真好きの少年が語り手となって、幼い頃から見てきた街の移ろいを話してくれる。
街で育ったストリート・ギャングたち。
一種の群像劇となっていて、ある者は死に、ある者は街を牛耳ろうとして突っ走る。
130分の長さだが、映画には小段落に分かれていて、それぞれの人物を主人公にした章を見せてくれて、退屈しないように造られている。
ある章では脇役だった人物が、次の章では中心に据えられて物語が展開する。
立場が変われば物語も変わって見える。
こういう捉え方は大変に面白いものだった。
中でも中心になって描かれるのは、悪事に対して何の躊躇も無いリトル・ゼ。街を乗っ取るためには麻薬だろうが、殺人だろうが見境なし。
その親友のベネは良識派。恋のために街を去ろうとするのだが・・・。
やがて物語は街の実権をめぐっての二つのグループの抗争となっていく。
昼日中からの発砲の応酬は、そう、これはまるでブラジル版”仁義なき戦い”である。
映画は最後の最後まで緩むことなく魅せてくれた。
語りべを抗争の当事者ではない少年にしたところが好かった。
彼はスラム街の生活から抜け出そうとしており、ということは明日への希望を失っていないということであり、目線がスラム街の悲惨さに飲み込まれていなかったのだ。
この映画の5年後に撮られたのが、やはりスラム街でのギャング抗争を描いたのが「シティ・オブ・メン」だった。
そちらを先に観てしまっていたのだが、映画の出来としてはこちらの方が格段によかった。