あきりんの映画生活

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「秋の理由」 (2016年)

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2016年 日本 88分
監督:福間健二
出演:伊藤洋三郎、 佐野和宏、 趣里、 寺島しのぶ

詩情があふれる作品。 ★★★

詩人でもある福間監督の第5作品。
自分の詩集「秋の理由」のなかの言葉が、登場人物たちの台詞としてもあらわれてくる。

つぶれかかった小さな出版社を営む宮本(伊藤洋三郎)と、代表作「秋の理由」のあとは作品書けないでいる作家の村岡(佐野和宏)。
村岡は精神的なダメージから声が出なくなっており、宮本はそんな村岡を励ましつづけながらも彼の妻、美咲(寺島しのぶ)に想いを寄せていく。
そこに小説の中から抜け出してきたような少女(趣里)があらわれる。

佐野和宏は、実際には喉頭癌の手術によって声を失っている。
映画の中では、村岡は筆談器を使っての会話をおこなっては、酒に酔いつぶれていた。
そんな村岡に妻の美咲は次第に心のバランスを失っていく。
美咲は、「私に話したくないばかりに声が出なくなったのではないかと思うの」と、心情を吐露する。
寺島しのぶの自然体の演技が、強い。

福間監督は、「六十代を迎えた二人の男の友情と、かれらを取り囲む人々の秋を描いています。その秋は現実と夢が入りくむ季節です。(略)ひとりの力ではどうにもならないことの多いこの世界の、悲しい秋。でもそれに負けてはいないという光をとらえたと確信しています。」と言っている。

これまでの福間監督の映画に比べると、本作は実験映画的な色合いが少なくなり、とても観やすい作りとなっている。
そのために、これまでの福間作品の、ややもすれば詩を書いたりする人でなければ入り込みにくかった作品世界が、詩とは無縁な人でも受け止めやすいものとなっている。
それでいながら詩的な画面、台詞はしっかりと存在していた。
画面から伝わるものは素直なものでありながら、映像に奥行きのある詩情が感じられた。

ちなみに、同名「秋の理由」の詩作品の最終部分は、

 わたしは
 顔や手に粘りつく暗示を洗いおとして
 誰かが泣いているために
 秋が来たわけではないことを知った

前日には福間監督の上映後のトークがあったらしいのだが、平日の昼間では出かけられなかった。残念。