2009年 ドイツ 101分
監督:アノ・サオル
出演:マッツ・ミケルセン
時をさかのぼるドア。 ★★★☆
辛いできごとを体験した人は、あのできごとの前に戻れたら、と後悔するだろう。
もう一度、あのときからやり直せたら、と夢想するだろう。
しかし、あのときから違う未来を手に入れるためには、何かをその代償としなければならないのだ。
自分が不倫をしている間にプールへ落ちた娘が亡くなってしまったダビッド(マッツ・ミケルセン)。
それから5年が経ち、妻とも別れ失意の日々を送っていた彼は、廃屋の中にドアを見つける。
そのドアの向こうは5年前の世界だった。
そのことに気付いた彼は、急いでプールに駆けつけ娘を助け出す。よかった・・・。
主役のマッツ・ミケルセンはいろいろな映画でよく観る。
好い人なんだか、悪い人なんだか、ちょっと得体の知れないような雰囲気も持っている。
印象的な演技派で、「007/カジノロワイヤル」では血の涙を流す悪ボスも演じていた。
さて、こういったタイム・パラドクスものではいつも問題になる命題、それは未来から来た自分が過去の自分と出会ったらどうなるのか?
この映画では、結論としては、何も起こらない。二人は普通に出会うことができる。
ただ、一つの世界に同じ人物が二人いるのは、まずい。
では、どうする?
(この映画の着目点は、ここが、どうなる?ではなく、どうする?というところ)
実際には、不審人物と間違われて何者かに襲われた未来のダビッドは、襲ってきた相手をはずみで殺してしまう。
その殺した相手は、5年前の自分だった・・・。
5年前のダビッドになりすまして、妻と、生きている娘と暮らし始める5年後のダビッド。
よかった、よかった?
(以下、ネタバレ)
この映画の面白いのは、5年後の妻も、私だって娘に会いたいわよ、と言って過去に戻ってきてしまうところ。
どうする?
(以下、ネタバレのつっこみ)
未来のダビッドは、過去の世界を娘が生きている世界に変えてしまった。
すると、未来の世界はどう変わっているのだろう?
パラレル・ワールドとして、娘が死んでいる未来とは違う未来につながっていくのだろうか。
あのドアを抜けて5年後の世界に行った妻と娘は、どうなった?
過去を変えるためには過去の自分を殺さなければならない、という不条理感が、ユニークで面白い映画でした。