2016年 中国 103分
監督;チャン・イーモウ
出演:マット・デイモン、 ジン・ティエン、 アンディ・ラウ
SF史実アクション。 ★★★
タイトルの”巨大な壁”というのは、万里の長城のことである。
ただこの映画は、単に歴史上の万里の長城を描いているのではなく、饕餮(とうてつ)という、60年に一度現われて人類を襲うという怪物との闘いを描いている。
ヨーロッパから黒色火薬を求めてやってきた傭兵のウィリアム(マット・デイモン)が主人公。
親友と一緒にたどりついた万里の長城で、彼は守備兵たちと一緒にその饕餮(とうてつ)と闘うことになる。
守備軍の軍師にアンディ・ラウ。
そして女性指揮官にジン・ティエン。
イーモウ監督らしく、今回も色彩にはこだわっていた。
並ぶ兵士たちの甲冑はきれいに色分けされている。
ウィリアムたちは、赤色の兵士たちは射手だな、黒色は歩兵か。ではあの青色の兵士たちは何だろう?と考えたりしている。
饕餮(とうてつ)は夥しい数で襲来してくる。
1匹でも強敵なのに、こんなに沢山で襲ってこられてはとても太刀打ちできそうにないぞ。
ということで、いろいろな戦法もあらわれる。
石垣をよじ登ってくる敵をやっつけるために、石垣の途中から大きな刃を突き出し、それを左右に振り払って石垣に取りついている敵を斬る.
このアイディアには感心した。なるほど。
それに比べて、バンジー・ジャンプのように飛び降りては敵を突くという戦法は、あまり効果的ではなかったように思えたぞ。
絵柄としてはとても好かったのだが・・・(苦笑)。
闘いで守備軍の将軍が亡くなり、その霊を弔うために、ろうそくを灯した無数の紙気球が飛ばされる。
ここは見事な映像美だった。
そしてこれは後半のクライマックスに繋がる布石にもなっていた。
というようなことで、ふんだんに楽しめる映像美は、さすがにチャン・イーモー監督。
ただし物語はどうかというと、えっ?これ、チャン・イーモウ監督作?というぐらいに、違和感ありあり。
大好きだった武侠ものの「HERO」や「LOVERS」でも底流を流れていた男女の屈折した思いのようなものは、今作ではまったくなし。
あっさりとした好意から、よし、俺も行くぜ、みたいな感じ(苦笑)。
(以下、ネタバレ)
饕餮(とうてつ)の都を責めるための知略にはびっくり。
(そもそも、何故彼らは60年ごとに攻めてくるんだ? 目的は何なのだ? 笑)
彼らの知略にまんまと裏を掻かれた守備軍は、情けないなあ。
軍師も気づかなかったんかい? アンディさん、あんたのことだよ(笑)。
何万匹もいるような饕餮(とうてつ)をやっつけられる方法など、ありそうにもないぞ。
しかし、彼らにはただ1点の弱点があったのだねえ。
この設定は最近はやたらと見かける。強敵の宇宙怪獣とか、なんやかんやをやっつけるための、奥の手、禁じ手のマザー設定(笑)。
今回もその設定によって、バタバタバタ・・・。
見事な色彩美+何も考えないですむアクション。
アメリカでは興行的には失敗したとのことですが、あまりハードルを上げなければ、充分に楽しむことができます。