あきりんの映画生活

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「ダンケルク」 (2017年)

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2017年 イギリス 106分
監督:クリストファー・ノーラン
出演:フィオン・ホワイトヘッド、 トム・ハーディ、 マーク・ライランス

第二次大戦ヨーロッパ戦線もの。 ★★★☆

物語の舞台はフランスのドーヴァー海峡に面したダンケルク
ドイツ軍に攻め込まれた40万人の連合軍が敗走している(時代は真珠湾攻撃よりも前で、電撃侵攻したドイツ軍が優勢だった頃である)。
この連合軍兵士を追い詰められた海岸から救出しなければならない・・・。

映画は3つのパートが組み合わされている。
「陸 1週間」、「海 1日」、「空 1時間」。
つまり陸海空のそれぞれでの救出作戦の様子が交互に描かれる。

イギリス兵士トミー(フィオン・ホワイトヘッド)は街中での銃撃戦から必死で逃げのび、海岸にたどりつく。
しかしそこにはおびただしい数の兵士が救助の船を待っていた。
なんとか上手く立ち回って救出船に乗り込まなければ。

ドーヴァー海峡は35kmぐらいの幅の狭い海峡。
ダンケルクの向かいのイギリスの港ドーヴァーからは、兵士救出のために民間船も次々と出港する。
その1隻の船長ドーソン(マーク・ライアンス)も息子、その友だちといっしょにダンケルクに向かう。

空では、ファリアー(トム・ハーディ)が操縦する戦闘機スピットファイアが仲間機といっしょに撤退援護のために飛んでいた。
燃料は限られているが、できるだけのことをするぞ。

陸海空では時間軸が違っているので、陸のある情景の次にうつった海の情景は、時間的にはまだ先に起こるできごとである。
そして空のできごとは映画の中で流れる時間でいえば最後の1時間だけの出来事なのである。
しかし違和感を感じることはまったくない。

海の出来事の後の方で、空の出来事の始めに起きた出来事が見えたりする。
ああ、そうか、なるほどと思う。
工夫された作り方で、緊迫感が巧みに組み合わされている。

ノーラン監督がこのような史実ものを撮るのは初めて。
CG嫌いなノーラン監督なので、エキストラ1500人に加えて、厚紙で作った兵士を並べたとのこと。本当かいな?

そして彼の美意識か、信条か、戦争映画なのに血はほとんど流れない。
しかし、どこからか飛んでくる銃弾の怖ろしさを充分に感じさせる。ピュンッという音、そしてスパンッと物にあく穴。
そして身を隠すところもない砂浜で飛行機の機銃掃射で狙われる怖ろしさ。
ちょっとした偶然の運命で生と死が隣り合わせになっている。

これだけの壮大な歴史的できごとを100分ちょっとにまとめて見せてくれる。
それぞれの逸話の主人公の切り取り方、描き方に無駄がない。さすがである。

特に好かったのは戦闘機に乗っているトム・ハーディ
それに民間船船長のマーク・ライアンス。
どちらも我が身の危険を越えての信念に突き動かされて行動する。
これぞ男だ。格好いい。
(そういえば、この映画にはラストのあたりを除いてはまったく女性が出ていなかった)

チャ-チル首相は、このダイナモ作戦で救出できるのは3万人だけだろうと予測していたという。
しかし、実際には30万人が救出されている。素晴らしい。

映画の最後も好かった。
イギリスへ帰還した兵士たちは、負け戦をして逃げ帰ってきた自分たちを国中の人が非難するだろうと落ち込んでいた。
しかし人々は帰還兵たちを温かく迎えてくれたのである。
敗走よりは玉砕を!と叫んでいたどこかの国とは違うなあ。

(余談)

1964年にアンリ・ヴェルヌイユ監督作の「ダンケルク」という映画があるそうです。
主演はジャン・ポール・ベルモンドで、ダンケルクから脱出しようとするフランス兵士を描いているとのこと。
どんな映画だったのだろう?